blog.鶯梭庵

二〇〇六年 水無月 十五日 木曜日

鶯の語源 [/language]

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このブログのアクセスログを見ていたら、「鶯(うぐいす)」の語源を検索してここにたどり着いた方がいらした。ご期待に添えず申しわけない。

私も気になったので、ウェブを検索してみたところ、鳴き声「ウークイ」に、飛ぶものを表す「ス」が付いたという説がもっともらしいように思う。もっとも、鶯は古くは「うくひす」と書かれていたから、より古い発音は「ウクピス」であったはずで、古代日本人が聞いた鶯の鳴き声は「ウークピ」であっただろう。

(奈良時代に「母には2度会うが父には会えないものは何?」というなぞなぞがあった。答えは「唇」。当時「母」は「パパ」と発音されていた。「p」は「f」になり、一部が「h」に、一部が「w」になった。)

「ス」で終わる鳥の名といえば、「カケス」「カラス」「ホトトギス」「モズ」などがある。雉の古名は「キギス」というそうだ。これらも、鳴き声+「ス」のパターンなのだろう。

飛ぶものといえば、鳥だけでなく、虫も飛ぶ。「キリギリス」は「キリキリ」と鳴く虫ということらしい。なお、昔のキリギリスは今のコオロギのこと。「ミミズ」も「ミミ」と鳴く虫だという説がある。ミミズは鳴かないが、クビキリギスやケラなど、ほかの虫の鳴き声をミミズの鳴き声だと勘違いしたのだという。

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二〇〇六年 皐月 廿四日 水曜日

The の訳し方 [/language]

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英語に "the" という定冠詞がある。そもそも日本語には冠詞なるものがないので、訳し方に困る。訳さなくてもよいことが多い、と言われることがあって、確かにそうなのだけれど、訳さなければならないことも多い。辞書を引くと、訳語としては「その」というのが第1に載っているが、私の大雑把な感覚では、「その」と訳せる場合は意外に少ない。

そもそもどういうときに "the" を使うのかといえば、話し手と聞き手(あるいは書き手と読み手)のあいだで、特定の何かについて話しているのだという共通了解があるときだが、一口に共通了解があるといっても、様々な場合があってややこしい。

例えば今週の TidBITS で私が翻訳を担当している記事 Apple Reminds Us of Trusting, Verifying に、こんな文章がある。


Four years ago, Apple became more serious about using encryption to allow validation of material it sends out after the BuqTraq security list posted a brief vulnerability report noting that Apple didn't verify the integrity of programs and patches released via Mac OS X's Software Update feature.


Apple fixed the problem by stapling on an encryption-based validation method that ensured that downloaded updates actually came from Apple before they were installed - and released that update about 10 days after the report.


最初の "the BuqTraq security list" は、リストと言ってもただのリストではなく、BuqTraq という名のセキュリティに関するリストだと言っているから、特定のリストであることが了解される。2番目の "the integrity of programs and patches released via Mac OS X's Software Update feature" は、完全性と言っても Mac OS X のソフトウェア・アップデート機能で提供されるプログラムやパッチの完全性だということで、特定の完全性であることが了解される。どちらの場合でも、日本語では特定されるかされないかの区別をしないので、訳しようがないし、訳す必要もない。

一方、第2段落の "the problem" は第1段落で説明した「その問題」だし、"the report" も第1段落に登場した「そのレポート」を指しているから、これらを単に「問題」「レポート」と訳してしまっては、文意が取れなくなってしまう。これらの "the" は何とかして訳さないといけない。

"the problem" については、直前に説明された内容を受けているから、「この問題」と訳すと収まりがよい。一方、"the report" の場合、第1段落の "a brief vulnerability report" とのあいだがあいているので、「そのレポート」や「このレポート」と訳しても分かりにくい文章になってしまう。私は「件のレポート」と訳すことにしたが、文脈によっては「例のレポート」「当該のレポート」などとも訳せる。

この文章の中では "Apple" を何度も繰り返しているが、英語ではこのような繰り返しを好まない人も多い。その場合、"the company" などと言い換えることになるが、これを日本語に訳す場合、通常は「同社」とするとしっくり行く。ただし、もしもこれが Apple 自身の書いた文章なら、「当社」ないし「弊社」と訳す。また、日本語では同じ言葉を繰り返しても問題がないので、「Apple」と訳すこともできる。

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二〇〇六年 皐月 廿二日 月曜日

GetUpEnglish [/language]

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GetUpEnglish というサイトを見つけた。

こういう日常的な表現は、日本で英語を勉強していても、なかなか目にしたり耳にしたりする機会がない。それでいて、私のアメリカの友人も普通に使う。聞けば大体意味はわかるが、では自分で使ってみようとしても、正確なニュアンスがわからないので、「ここでこの表現を使っていいのだろうか」と迷ってしまう。

このサイトは、説明もわかりやすいし、1日1つというペースもちょうどよい。それに、例文に前日の表現が入っていたりするのが、気が利いている。1度読んだだけでは忘れてしまうことも多いが、2度目にすれば記憶に定着しやすい。

#71さんのコメント:
この先生に教わったことあります。やっぱり変わった経歴の持ち主でしたか。

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二〇〇六年 皐月 十六日 火曜日

バーラト・スオミ・日本 [/language]

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現在、折紙探偵団のデイブ・ブリルさんの連載記事を翻訳している。その関連で調べ物をしているときに知ったのだが、インドの正式な国名は、インドの公用語であるヒンディー語で「バーラト」と言うそうだ。同じような例として、フィンランドはフィンランド語で「スオミ」と言う。ジャパンを日本語で「日本」と言うことは、漢字文化圏以外では知っている人は少ないだろう。

オランダはオランダ語で「ネーデルラント」と言う。オランダ(オランダ語でホラント・日本に伝わったのはポルトガル語読み)はもともと州の名で、現在は南北2つの州に分かれている。ハーグ(オランダ語ではスフラーフェンハーエまたはデン・ハーフ)は南ホラント州の州都だ。

#71さんのコメント:
最近日本でもニュースに取り上げられるコーカサスの「グルジア」。
もともとはロシア語読みです。

それで旧ソ連から独立した際「ジョージア(Georgia)」という英語風発音に代わったのですが,日本では未だに「グルジア」というロシア語読み。現地の人の一部は未だに”ロシア離れ出来ていない”とみなされるのは心外かもしれませんね。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/georgia/data.html

羽鳥さんのコメント:
#71 さん、コメントありがとうございます。

グルジアは、グルジア語では「サカルトヴェロ」と言うそうです。それからすると、「ジョージア」でも「グルジア」でも、どちらでもかまわないと思っているかもしれません。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%e3%82%b0%e3%83%ab%e3%82%b8%e3%82%a2

日本も、「ジャポン」だったり「ヤーパン」だったり「ハポン」だったり、はたまた「リーベン」だったり「イルボン」だったりしますからね。

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二〇〇六年 卯月 十三日 木曜日

青黒白黄 [/language]

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ご存知の通り、英語で「青」は "blue"、「黒」は "black" だ。"blond hair" は金髪だし、"beluga" は白イルカだ。「白紙」を意味する "blank" はフランス語の blanc(白)に由来するし、黄色の色素である "flavin" はラテン語の flavus(黄金色)に由来する。

これらの言葉はすべて、印欧祖語の bhel(輝く・燃える)から派生したと考えられているそうだ。黒は燃え残りの色だから別として、光輝く明るい色が、時代により、また地域により、青になったり白になったり黄色になったりするのは興味深い。これらの色は古代日本語では「赤」と呼ばれただろうなどと想像するのも、また楽しい。

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羽鳥 公士郎