blog.鶯梭庵

二〇一四年 師走 廿九日 月曜日

日本の医療は崩壊する [/links]

この記事は書かれてから1年以上経過しています。内容が古くなっている可能性があります。コメントの受付は終了しました。

上昌広著『医療詐欺』を読んだ。

明治以来、敗戦を経ても本質的には変わらず続いてきた日本の官僚制度が、今あちこちで歪みを露呈している。医療も例外ではない。上によれば、30年後、日本の医療は間違いなく崩壊する。今でさえ医師や看護婦は不足しており、劣悪な労働環境に置かれているが、これから医師不足がますます深刻になるという。

福島第一原発の事故によって、原子力ムラの構成員に御用学者がいることが明らかになったが、「医療ムラ」にも御用学者がいる。それを如実に示したのが、ノバルティスファーマ社がかかわった一連の事件だ。これは原発事故ほどは話題になっていないが、多くの人の健康と生命を損ねたという点では、原発事故に匹敵する事件だ。

2013年に発覚した「ディオバン事件」では、ノバルティスファーマが販売している降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験で、データが改竄されていた。バルサルタンは、効き目は弱いかわりに副作用も弱いと言われていたのだが、実際には副作用だけあって効き目はほとんどなかった。そのような薬であっても、臨床の実績が少ない大学教授に資金も人材も提供し、講演をさせたり雑誌に出したりしておだてあげれば、効き目があるという研究結果を発表させることができる。ノバルティスファーマから5つの大学に支払われた「奨学寄付金」は11億円あまり、ディオバンの売り上げは年間1000億円だから、ノバルティスファーマは十二分に元を取った。

上によれば、製薬会社がそのような不正をする背景に、中央社会保険医療協議会(中医協)による価格統制がある。中医協こそ、医療ムラの中枢だという。製薬会社は、新薬を開発しても、その価格を自由に決めることができない。価格は中医協の役人が決める。さらに、よく売れる薬は、年々値段を下げられてしまう。だから、まじめに商売する製薬会社は損をする。

薬だけではない。いわゆる国立病院は、重症の患者を拒否し、軽症の患者だけを診るのだという。なぜなら、国立病院の使命は国の政策医療を推進することであって、臨床研究の対象にならない病人は患者ではないからだ。もちろん、その方針にしたがうことを拒否する良心的な医師もいるが、そのような医師は病院の中で冷遇され、結局は別の病院に移るか開業することになる。患者の利益を顧みず、お上の方針に粛々と従う人が出世する。その遠因は、国立病院が戦前の日本軍の病院を母体としていることにあると上は指摘しているが、実際のところ、このようなことは日本の官僚システムではどこでも見られる。裏を返せば、日本の官僚システムは旧日本軍的な性格を色濃く残していると言える。

今の日本では、高齢化が問題となっている。高齢化が進めば、医療を必要とする人が増えるから、医師も増やさなければならない道理だが、日本医師会も全国医学部長病院長会議も、医師を増やすのには反対している。日本医師会が反対する理由は、同業者が増えると自分の売り上げが減るというくだらない理由だ。また、全国医学部長病院長会議が反対している理由は、医学部の数が増えると自分の利権が弱まるという、やはりくだらない理由だ。

医学部の新設が反対される理由がもう1つある。医学部というのは一般に学費が高いので、富裕層の子しか入学できない。ただでさえ少子化で全国の大学が学生を集めるのに苦労しているのに、医学部は富裕層の子という少ないパイを取り合うのだから、医学部が増えては困るのだ。実際、日本では、1979年に琉球大学に医学部ができて以来、医学部は1つも新設されていない。

しかし、上によれば、医師不足の「真犯人」は厚労省だ。厚労省は、医師が増えれば医療費が増えるので社会保障支出が増え、国家財政が破綻すると考えている。この「医療費亡国論」は、30年前に米国で唱えられたものだが、現在では否定されている。しかし、日本の官僚組織は、一度ある方向に動き出すと、途中で方向転換ができない。そのあたりにも旧日本軍と共通したところがある。

そう考えると、崩壊の危機に瀕しているのは、日本の医療だけでなく、日本そのものなのだろう。今から70年ほど前に日本を焼け野原にしたシステムが、今でも温存されている。このシステムは、結局は皆がパイを取り合っているだけだから、パイが増えているあいだはうまく回っているように見えるが、パイが足りなくなると途端に行き詰まる。

勉強になりましたさんのコメント:
色々考えさせられました。

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二〇一四年 長月 十日 水曜日

LaTeX 覚え書き・その4 [/links]

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その3から続く。

LaTeX でページ周囲の余白を特定の長さに設定したいとき、geometry パッケージを使えば簡単だが、このパッケージを使わなくても、LaTeX のページがどのようにレイアウトされているかが分かれば、それほど難しくない。(ページのレイアウトを知るには、layout パッケージを使うとよい。)

以下、article または jsarticle クラスを使った横書き片面印刷を前提とする。

まず、原点が紙の左端と上端から 1 インチずつ内側にあるので、原点が紙の左上隅になるようにオフセットする。


\setlength{\hoffset}{-1in}

\setlength{\voffset}{-1in}


次に、左余白と上余白を設定する。


\setlength{\oddsidemargin}{左余白の長さ}

\setlength{\topmargin}{上余白の長さ}


右余白と下余白は直接指定できないが、本文領域の幅と高さを指定すると、残りが余白になる。


\setlength{\textwidth}{本文領域の幅(紙の幅 - 左余白 - 右余白)}

\setlength{\textheight}{本文領域の高さ(紙の高さ - 上余白 - 下余白)}


左右はこれでよいが、上下にはヘッダー領域とフッター領域があるので、それを補正する必要がある。なお、ヘッダーとフッターを出力するかどうかは、\pagestyle の設定で決まる。デフォルトは plain で、フッター(ページ番号)のみを出力する。empty にすると、ヘッダーもフッターも出力しない。headings および myheadings ではヘッダーのみ出力する。


ヘッダーを出力しない場合、ヘッダーの高さを上余白から引く。


\addtolength{\topmargin}{-\headheight}

\addtolength{\topmargin}{-\headsep}


ヘッダーを出力する場合は、ヘッダーの高さを本文領域の高さから引く。


\addtolength{\textheight}{-\headheight}

\addtolength{\textheight}{-\headsep}


フッターを出力する場合、フッターの高さを本文領域の高さから引く。


\addtolength{\textheight}{-\footskip}


フッターを出力しない場合、何もしなくてよい。


例えば、A4(210 mm x 297 mm)で、左右の余白 25 mm、上下の余白 30 mm、\pagestyle デフォルトなら、以下のようになる。


\setlength{\hoffset}{-1in}

\setlength{\voffset}{-1in}

\setlength{\oddsidemargin}{25mm}

\setlength{\topmargin}{30mm}

\setlength{\textwidth}{160mm} % 210mm - 25mm - 25mm

\setlength{\textheight}{237mm} % 297mm - 30mm - 30mm

\addtolength{\topmargin}{-\headheight}

\addtolength{\topmargin}{-\headsep}

\addtolength{\textheight}{-\footskip}


なお、jsarticle クラスを使って、フォントサイズを 10pt 以外に指定すると、余白も含めたページ全体が拡大縮小されるので、長さの単位を inmm ではなく trueintruemm にする必要がある。

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二〇一四年 長月 七日 日曜日

LaTeX 覚え書き・その3 [/links]

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その2から続く。

欧文では、単語と単語のあいだに空白が入る。{\it ...} でイタリックにすると、次の単語とのあいだの間隔がせまく感じられるので、{\it ...\/} と書いてイタリック補正をすることになっている。(実際はしていない人が多いと思う。私も知らなかった。)一方、\textit{...} なら、イタリック補正が自動的に適用される。


欧文では、文と文のあいだにも空白が入る。この空白は、単語と単語のあいだの空白よりも大きい。LaTeX では、「小文字+ピリオド」の直後に半角空白があると、そこで文が終わると判断している。そこで、文中に「小文字+ピリオド」がある場合、Mr.\ Doe のようにして、ピリオドで文が終わらないことを示す必要がある。「Mr.」の直後で改行を禁止するために Mr.~Doe としても、同じ効果がある。一方、「大文字+ピリオド」で文が終わる場合、文の後に適切な空白を空けるために World War I\@. と書く必要がある。


左寄せ、中央揃え、右寄せには、それぞれ flushleft 環境、center 環境、flushright 環境を使うことが多いが、これらの環境では、単に位置が水平方向に移動するだけでなく、上下に余白が空く。上下の空白を空けないようにするには、それぞれ \raggedleft\centering\raggedright を使う。

例えば、


\begin{figure}[htbp]

\begin{center}

\includegraphics{...}

\end{center}

\caption{...}\label{...}

\end{figure}


と書けば図の上下に余白が空くが、


\begin{figure}[htbp]

\centering

\includegraphics{...}

\caption{...}\label{...}

\end{figure}


と書けば余白が空かない。前者のコードは良くないという人がいるが、空白の有る無しは好みの問題と思う。

なお、一行だけ右寄せするなら、\hfill ... と書いてもよい。

その4へ続く。

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二〇一四年 長月 四日 木曜日

LaTeX 覚え書き・その2 [/links]

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その1から続く。

TeX のパッケージの中には、DVI ドライバーに依存するものがある。有名なところでは color とか graphicx とか。ドライバーとして、海外では pdfTeX を使うことが多いそうだが、これは日本語に対応していないので、日本では dvipdfmx を使うことが多いと思う。その場合、


\usepackage[dvipdfmx]{color}

\usepackage[dvipdfmx]{graphicx}


のようにドライバーを指定する。これをまとめて


\usepackage[dvipdfmx]{color,graphicx}


のように書くことが多い。ドライバーに依存するパッケージをカンマで区切って並べれば、すべてのパッケージに同じドライバーオプションが適用される。しかし、どのパッケージがドライバーに依存してどれが依存しないかを調べるのも面倒だ。実際のところ、次のように書いたほうがよい。


\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}

\usepackage{color}

\usepackage{graphicx}


\documentclass のオプションで指定したものは、グローバルオプションとなり、自動的にすべてのパッケージに適用される。

ところが、geometry パッケージの場合、dvipdfmx を使用する場合でも、ドライバーオプションを dvipdfm と指定する。そのため、以下のようになる。


\documentclass[dvipdfmx]{jsarticle}

\usepackage[dvipdfm]{geometry}

\usepackage{color}

\usepackage{graphicx}


beamer クラスを使うときも、同様にグローバルオプションでドライバーを指定する。beamer クラス自体はドライバーに依存しないが、内部で color パッケージや hyperref パッケージを呼んでいるので、これらのパッケージにドライバーオプションを渡す必要がある。

なお、beamer のマニュアルを読むと、dvipdfmx には対応しないと書かれている。しかしそれはナビゲーションシンボルなどのリンクが動かないだけのようだ。それらの機能を使わない限り、dvipdfmx を使っても問題ないようだ。

その3に続く。

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二〇一四年 長月 一日 月曜日

LaTeX 覚え書き [/links]

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6OSME が終わって、Origami6 に投稿する論文を書いている。LaTeX を使っている。ここ何年かはプレゼンテーションのスライドも LaTeX で作っているが、私が論文を書いたりスライドを作ったりするのは年に1回か2回なので、そのたびにコマンドの使い方を思い出す必要がある。今回もいろいろ苦労があったので、次回 LaTeX を使うときに思い出しやすいように、ここに書いておく。


ページを横に分割するときに minipage 環境を使うことがあるが、minipage 環境と minipage 環境のあいだには 5 pt ほどのすき間が空く。論文ではほとんど問題にならないが、beamer クラスでスライドを作るときなど、minipage 環境の幅を指定するときにこのすき間を考慮しないと、最後の minipage 環境が改行されて次の行にいってしまうことがある。


部分的に縦書きするには、plext パッケージを使う。一行だけ縦書きにするには、\pbox<t>{...} と書く。複数行の縦書きなら \parbox<t>{高さ}{...} とする。\parbox の最初の引数は通常は幅だが、縦書きでは 90 度回転されて高さになる。縦書き \parbox の中では右寄せ、左寄せ、余白などもすべて 90 度回転されるので注意。


イタリックを指定するのに {\it ...} と書くことが多いが、wrapfig パッケージはこの書き方に対応していない。そもそもこの形でスタイルを指定するのは古い書き方であり、使ってはいけないそうだ\textit{...} と書けばよいのだが、イタリックのために6文字もタイプするのはめんどうなので、\newcommand{\I}{\textit} とかしておくとよいと思う。


2つのキャプション付き画像を横に並べたいとき、minipage 環境を使うことが多いが、floatrow パッケージを使えば


\begin{figure}[htbp]

\begin{floatrow}

\ffigbox

{\caption{...}\label{...}}

{\includegraphics{...}}

\ffigbox

{\caption{...}\label{...}}

{\includegraphics{...}}

\end{floatrow}

\end{figure}


と簡単に書ける。ただし、この方法で3つ以上並べることはできない。3つ以上並べたい場合は、\ffigbox の幅を指定する必要がある。特に \ffigbox[\FBwidth]{...}{...} とすると、画像ボックスの幅が画像の幅と同じになる。

その2に続く。

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羽鳥 公士郎