blog.鶯梭庵

二〇一一年 神無月 四日 火曜日

ファスナー [/language]

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日本で一般にファスナーと呼んでいるものは、留め具が直線状に2列に並んでいて、それをかみ合わせることで固定するものだ。ジッパーとかチャックとも呼ばれるが、ジッパー Zipper はもともと米国 Goodrich 社の商標であり、チャックも日本で一般的な商品の名前だった。チャックの語源は「巾着」だという。工作機械で工作物を固定するための器具もチャック chuck というが、これはファスナーとは関係ない。

ファスナー fastener というのは一般に留め具のことで、マジックテープやスナップボタン、ピン、ホック、ボルト、ねじ、クリップなどもファスナーに含まれる。日本では、点で留めるものを点ファスナー、線で留めるものを線ファスナー、面で留めるものを面ファスナーと区別している。いわゆるファスナーは線ファスナーということになる。ただし、英語ではこのような区別をしないようだ。

面ファスナーは、日本では一般にマジックテープと言うが、これはクラレ社の登録商標だ。米国ではベルクロ Velcro と言うのが普通だが、これも Velcro 社の登録商標だ。日本でもベルクロと言うことが増えつつあるが、登録商標を使わないという目的なら、ベルクロにしたところでたいして変わらない。

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二〇一〇年 神無月 九日 土曜日

日本語には主語がない [/language]

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金谷武洋著『日本語文法の謎を解く』を読んだ。

金谷はカナダで日本語を教えているそうだが、外国人向けに日本語を教えている人のほとんどは、日本の学校で教えられている文法を使っていない。というのも、いわゆる学校文法は、英語やフランス語を理解するための文法を無理矢理日本語に当てはめたものであるため、日本語の理解に役立たない。そして、そのような文法を学校で教えているため、日本人は日本語と英語の本質的な違いに気がつかないまま英語を勉強することになる。それが、日本人が英語ができない大きな理由であると金谷は考えているが、私もそれに同意する。

金谷によれば、文法の違いは発想法の違いと結びついている。文を作るとき、日本語では「〜ある」と表現することが多いのに対し、英語では「〜する」と表現することが多い。そのため、英語の文の骨格は常に「主語 + 動詞」であるが、日本語の文にはこの形にあてはまらないものが非常に多い。それを、「日本語の文は『主語 + 述語』である」などと説明するから、英語の習得に支障が出るのだ。

金谷によれば、日本語の基本的文型は「〜だ」(名詞文)、「〜い」(形容詞文)、「〜する」(動詞文)の3つである。英語の文が、主語と動詞がなければ文にならないのと異なり、日本語の文には主語も動詞も必要ではない。「主語無用論」を唱えたのは三上章であるが、金谷は三上文法を基礎としている。三上によれば、日本語に「主題」と「主格」はあるが、「主語」はない。「象は鼻が長い。」の「象は」は主題であり、「鼻が」は主格補語だ。この文に主語はない。主格補語を便宜的に「主語」と呼んでもよいが、日本語の主格補語は動作主体とは限らないので、英語の主語とは異なる。日英の翻訳では、この違いを意識することが重要だ。

日本人が英文を理解する場合は、たいていの場合英語の主語を日本語の主格補語として解釈すればよいが、それをそのまま訳文としてしまうと、直訳調の悪文となってしまう。和文英訳の場合はさらに問題で、そもそも主格補語がない場合が多いし、主格補語を主語にできないこともある。「頭が痛い。」を "My head is ..." と考え始めると、どうしたって英語の文にはできない。

私が仕事で和文英訳をする際、まず最初に考えるのは、主語をどうするかということだ。なんとかして主語をひねり出す必要があるが、逆に言えば、何を主語にするかをある程度自由に決められる。主格補語を主語にする必要はなく、英語として表現しやすい主語を選べばよい。その際、できるだけ「〜する」という文になるようにする。

たとえば、「象は鼻が長い。」を英訳する場合、「鼻が」を主語にするのではなく、「象が」を主語にする。「象の鼻が長い」ではなく「象が長い鼻を持つ」とすれば、自然な英語になる。つまり、"The elephant has a long nose." とする。

金谷はさらに、「〜ある」と「〜する」の違いを使って、敬語や自動詞・他動詞、受身なども鮮やかに分析してみせる。これも興味深い。

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二〇一〇年 如月 廿四日 水曜日

「アクセル」の語源 [/language]

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現在バンクーバー冬季オリンピックが開催されており、フィギュアスケートでトリプルアクセルがどうのと話題になっている。この「アクセル」は英語でも axel と言うが、1 回転半ジャンプをはじめた 19 世紀ノルウェーのフィギュアスケート選手 Axel Paulsen に由来している。

一方、自動車のアクセルは、英語の accelerator を縮めた和製英語だ。ただし、米国ではアクセルのことを accelerator と言うよりも gas pedal と言うことが多い。

ややこしいことに、自動車には axle という部品もある。これは「車軸」という意味だ。日本語のできない英語圏の人と話していて、accel- と言うつもりで「アクセル」と言うと、ほぼ間違いなく「車軸」の意味にとられるだろう。

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二〇〇九年 神無月 廿八日 水曜日

out-Microsoft Microsoft [/language]

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先日、"out-Microsoft Microsoft" という表現を見かけた。これは、シェイクスピアの『ハムレット』に出てくる "out-Herod Herod" をもじったものだ。

Herod とは、紀元前 37 年から 4 年まで在位したユダヤ王ヘロデのこと。「大王」"the Great" とも呼ばれる。聖書によると、ヘロデはイエスの成長をおそれ、ベツレヘムのすべての幼児を殺害させた。これが史実であるかどうかはわからないが、中世の演劇の中ではヘロデは残虐な暴君として描かれていた。

ある言葉に "out-" をつけると、「〜よりすぐれて」という意味になることがある。すると、"out-Herod" で「ヘロデをしのぐ」という意味になるはずだが、ヘロデが暴虐の象徴であったため、この言葉は「暴虐さにおいて〜をしのぐ」という意味で使われるようになった。そうなると、目的語が必要になるので、"out-Herod Herod" として「ヘロデよりも暴虐だ」という意味になる。

では、"out-Microsoft Microsoft" はどう訳せばよいだろうか。「Microsoft よりも○○だ」と訳そうにも、「○○」の部分に何を入れてよいか(何となく分かる気もするが)分からない。穏当な訳なら「Microsoft と同じやり方をして Microsoft をしのぐ」といったところだろう。「Microsoft よりも Microsoft らしくなる」としてもよいと思うが、皮肉が利き過ぎるかもしれない。

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二〇〇九年 神無月 廿日 火曜日

英語の受動態と日本語の受け身 [/language]

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ふと、英文法を体系的に勉強し直そうという気になって、何冊か本を買った。最初に読んだのは、関正生著『世界一わかりやすい英文法の授業』。著者は予備校の人気英語講師ということで、確かに分かりやすい。

なるべく丸暗記をしないようにするという姿勢にも共感できる。私は英語を使う仕事をしていることもあって、この本の内容は知識として知っていたことが多いが、口語調で簡潔にまとめられているので、頭の中が整理される。

たとえば、英語の受動態と日本語の受け身は違うと説明されている。日本語では受け身で表現しない場合でも、英語では受動態になることがある。そもそも英語で受動態を使うのは、受け身の意味を表す場合よりも、何らかの理由で主語を明示したくない場合が多い。

主語を明示したくない場合には、主語が漠然としていていちいち言うまでもない場合や、主語が分かりきっている場合、意図的に主語をぼかしたい場合などがある。そのような場合、日本語では主語を省略できるが、英語では、主語のない文はまともな文ではない(例外は命令文や日記の文など)。そこで、目的語だったものを主語にして、受動態とする。

なお、日本語の主語のように、省略してもかまわないものは、本当は主語ではないという人もいる。省略してもかまわないものは補語と呼ばれるので、主語のように見えるものは実は主格補語ということになる。日本語では、すべての文でいちいち主語を明示するとうるさくなるので、英語を日本語に訳すときは、主語を適宜省略した方がよい場合が多い。

英語の受動態は動作主を隠すのが目的なので、受動態の文で、"by someone" の形で動作主を表すことは、実際にはほとんどない。"by someone" をつけると、動作主がことさらに強調される。そのため、学術的な文章では、受動態はできるだけ避けるべきだとされる。受動態の文では、主語は隠されるか強調されるかのどちらかなので、文章が客観的ではなくなってしまう。

ただし、主語が長いために、受動態にして主語を後ろに持ってゆくという場合もある。英語でも日本語でもそうだが、主語と述語があまりに離れていると、文の意味がとりにくい。英語で、主語の後ろに主語を修飾する言葉がついていると、主語と動詞が離れてしまう。その場合、受動態にすると、動詞の直後に by をはさんですぐ主語がくるので、読みやすい文になる。

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羽鳥 公士郎