blog.鶯梭庵

二〇〇四年 長月 五日 日曜日

なぜ動物なのか [/origami]

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紙を折ると、何らかの形ができる。それが折り紙だ。折り紙が折り紙であるためには、それで十分なのだ。それなのに、ある折り紙を動物に見立てるというのは、どういうことなのだろう。

折り紙の素材は紙だ。それは植物からつくられる。植物の繊維が、水分子の水素結合によって結びつけられたもの。

折り紙の折りはじめの形は、多くの場合正方形だ。4本の直線と4つの直角からなる、極めて無機的な形。そういえば、フレーベルの教育論では、球が自然の形の象徴、立方体が人工の形の象徴である。

紙を折る、ということは、無機的な形をした植物の繊維の塊を折る。すると何らかの形ができる。紙を折ってできる形は、もともとの無機的な形の中に内包されていたものである。紙がもともと持っている可能性を越えた形を作ろうと思ったら、紙を切ったり貼ったりしなければならない。

その形が花のように見えたら、正方形の紙の中に花の形が潜んでいたことに驚く。種の中に花が潜んでいることが驚くべきことであるように。それはまるで、大自然の神秘を手の中で再現したように感じられる。

その形が動物のように見えたら、これは自然の神秘どころではなく、魔術である。手品師が何もないところから鳩を出すように、無機的な植物の塊から動物をつくる。不可能を可能にする技としての折り紙。

折り紙を動物に見立てようとする人は、おそらく、このような折り紙の錬金術的要素に魅かれているのだろうと思う。


2004年9月20日追記 正方形の紙を「無機的な形」というと、そこでの「形」というのは、幾何学的な輪郭を指しているように読めてしまうかもしれない。正方形が極めて無機的だとしても、正方形の紙を無機的だというのは、ちょっといい過ぎだった。正方形の紙は「単純な形をした植物の繊維の塊」というほうがよいだろう。


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羽鳥 公士郎