blog.鶯梭庵

二〇〇八年 水無月 十五日 日曜日

ピーマンとトウガラシ [/language]

ピーマンは英語で green pepper という。辛くないのにペッパーとは何事かと思うかもしれないが、「ピーマン」の語源はフランス語でトウガラシを表す piment だと言われている。実際のところ、ピーマンとトウガラシは植物学的には同じだ。トウガラシのうち、辛くない緑色の品種をピーマンと呼んでいる。近ごろの日本では赤や黄色のピーマンをパプリカといっているが、これも品種の違いに過ぎない。

英語では緑や赤や黄色をひっくるめて bell pepper または単に pepper という。そこで、赤ピーマンは red pepper というのが普通だが、トウガラシも赤いので、それだけでは辛いか辛くないかあいまいだ。そのため、red bell pepper と呼ぶこともある。トウガラシは chili pepper または単に chili ということが多い。

なお、シシトウやカイエンヌペッパー、ハラペーニョもピーマンやトウガラシと同一種だが、ハバネロやタバスコペッパーは別の種だそうだ。

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二〇〇八年 卯月 廿六日 土曜日

「住職」を英語で [/language]

英辞郎で「住職」を引いてみたところ、"resident priest" という訳が載っていた。この英語を文字通り訳すと「住み込みの僧侶」ということで、「住職」をそのように解釈したのだろうが、これは誤りだ。(修正依頼を出しておいたので、次回の改訂時には直っているだろう。)

「住職」というのは、「住持職」の略で、寺の長である僧を意味する。「住持」とは仏法を守護することで、寺に住むこととは関係がない。したがって、英訳としては "chief priest" や "head priest" が適当だ。

日本語にしかない概念を外国語に訳すときには、まずその日本語を正確に理解することが必要だ。普段日本語で生活をしていても、言葉の正確な意味は案外分からないものだ。「見立て」のときもそうだったが、日本語独自の言葉については、和英辞典を引く前に国語辞典を引くとよい。

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二〇〇八年 卯月 五日 土曜日

「一筆書き」を英語で [/language]

「一筆書き」を英語で何と言うか調べていたのだが、対応する言葉はないようだった。説明的に "to draw a picture with a single stroke" などとも訳せるが、しかし、欧米に一筆書きそのものがないわけではない。数学の世界では「ケーニヒスベルクの橋」問題が知られている。そこで検索してみると、Wikipedia の Eulerian path のページに行き当たった。

グラフ理論では、2種類の一筆書きを区別するようだ。始点と終点が異なるものを Eulerian path、始点と終点が同じものを Eulerian cycle という。前者のように一筆書きできる図形は traversable であると言い、後者のように一筆書きできる図形を unicursal または Eulerian であると言う。

そうすると、「一筆書き」は、文脈によって "an Eulerian path" と訳したり "a traversable figure" と訳したりもできる。

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二〇〇八年 弥生 廿一日 金曜日

「クラシック」を英語で [/language]

日本で「本格ミステリ」と呼ばれる推理小説のジャンルがあるが、これを英語で何というのか。本格ミステリ作家クラブのページによると、"classical whodunit" がもっとも近いということらしい。"whodunit" は "who done it?" を縮めたもので、「誰が犯人なのか」が焦点となっている小説ということだ。また、"classical" は、第一義的には古代ローマや古代ギリシャに関するものを表すが、ここでは「古典的」という意味だ。

古典的な西洋音楽を、日本では「クラシック音楽」といっているが、英語では "classic music" とはいわない。"classical music" という。"classic" と "classical" は若干意味が異なる。"classic" は、第一義的には「最上級の」または「典型的な」という意味だが、"classic music" というと、古代ローマや古代ギリシャの音楽と解釈されると思う。

なお、美術史では、"classical" の反対が "romantic" である。前者の代表がダビッドやアングルだとしたら、後者の代表がジェリコーやドラクロワということになる。音楽でも、狭義の classical music は18世紀後半から19世紀初頭までの、ハイドン、モーツァルト、ベートーベンに代表される古典音楽を指すが、19世紀のロマン主義音楽や20世紀の現代音楽も classical music に含めることが多い。

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二〇〇八年 如月 十九日 火曜日

If life hands you a lemon [/language]

TidBITS で私が翻訳を担当した「Apple Punished for iTunes Success(日本語版: Apple、iTunes の成功で禍を被る)」の中に、"if life hands you lemons, rent a lemonade stand" という表現があった。

これの元になっているのは、アメリカの教育家 Dale Carnegie の言葉 "When fate hands you a lemon, make lemonade." または "When fate hands us a lemon, let's try to make lemonade." だ。直訳すれば、「運命が我々にレモンを与えるならば、レモネードを作ろうではないか」となる。

レモンは、英語圏ではすっぱさやつらさを連想させる。そこで、"hand ~ a lemon" と言えば、「(人に)いやがらせをする」とか「(人に)いやなものをつかませる」という意味になる。くだらない質問をされたときは、"The answer is a lemon." と返してやればよい。

"If life hands you a lemon," という表現は、「禍が降りかかったときには」という意味でよく使われる。そんなときには、レモンを逆に利用してレモネードを作る、つまり「禍を転じて福となす」というわけだ。

それにしても、"rent a lemonade stand" というのは、「レモネードスタンドを借りなさい」というのだから、レモンを使って商売をしろと言っているわけだ。なかなか気の利いた表現だと思う。

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羽鳥 公士郎