二〇一〇年 如月 廿四日 水曜日■ 「アクセル」の語源 [/language]現在バンクーバー冬季オリンピックが開催されており、フィギュアスケートでトリプルアクセルがどうのと話題になっている。この「アクセル」は英語でも axel と言うが、1 回転半ジャンプをはじめた 19 世紀ノルウェーのフィギュアスケート選手 Axel Paulsen に由来している。 一方、自動車のアクセルは、英語の accelerator を縮めた和製英語だ。ただし、米国ではアクセルのことを accelerator と言うよりも gas pedal と言うことが多い。 ややこしいことに、自動車には axle という部品もある。これは「車軸」という意味だ。日本語のできない英語圏の人と話していて、accel- と言うつもりで「アクセル」と言うと、ほぼ間違いなく「車軸」の意味にとられるだろう。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇〇九年 神無月 廿八日 水曜日■ out-Microsoft Microsoft [/language]先日、"out-Microsoft Microsoft" という表現を見かけた。これは、シェイクスピアの『ハムレット』に出てくる "out-Herod Herod" をもじったものだ。 Herod とは、紀元前 37 年から 4 年まで在位したユダヤ王ヘロデのこと。「大王」"the Great" とも呼ばれる。聖書によると、ヘロデはイエスの成長をおそれ、ベツレヘムのすべての幼児を殺害させた。これが史実であるかどうかはわからないが、中世の演劇の中ではヘロデは残虐な暴君として描かれていた。 ある言葉に "out-" をつけると、「〜よりすぐれて」という意味になることがある。すると、"out-Herod" で「ヘロデをしのぐ」という意味になるはずだが、ヘロデが暴虐の象徴であったため、この言葉は「暴虐さにおいて〜をしのぐ」という意味で使われるようになった。そうなると、目的語が必要になるので、"out-Herod Herod" として「ヘロデよりも暴虐だ」という意味になる。 では、"out-Microsoft Microsoft" はどう訳せばよいだろうか。「Microsoft よりも○○だ」と訳そうにも、「○○」の部分に何を入れてよいか(何となく分かる気もするが)分からない。穏当な訳なら「Microsoft と同じやり方をして Microsoft をしのぐ」といったところだろう。「Microsoft よりも Microsoft らしくなる」としてもよいと思うが、皮肉が利き過ぎるかもしれない。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇〇九年 神無月 廿日 火曜日■ 英語の受動態と日本語の受け身 [/language]ふと、英文法を体系的に勉強し直そうという気になって、何冊か本を買った。最初に読んだのは、関正生著『世界一わかりやすい英文法の授業 なるべく丸暗記をしないようにするという姿勢にも共感できる。私は英語を使う仕事をしていることもあって、この本の内容は知識として知っていたことが多いが、口語調で簡潔にまとめられているので、頭の中が整理される。 たとえば、英語の受動態と日本語の受け身は違うと説明されている。日本語では受け身で表現しない場合でも、英語では受動態になることがある。そもそも英語で受動態を使うのは、受け身の意味を表す場合よりも、何らかの理由で主語を明示したくない場合が多い。 主語を明示したくない場合には、主語が漠然としていていちいち言うまでもない場合や、主語が分かりきっている場合、意図的に主語をぼかしたい場合などがある。そのような場合、日本語では主語を省略できるが、英語では、主語のない文はまともな文ではない(例外は命令文や日記の文など)。そこで、目的語だったものを主語にして、受動態とする。 なお、日本語の主語のように、省略してもかまわないものは、本当は主語ではないという人もいる。省略してもかまわないものは補語と呼ばれるので、主語のように見えるものは実は主格補語ということになる。日本語では、すべての文でいちいち主語を明示するとうるさくなるので、英語を日本語に訳すときは、主語を適宜省略した方がよい場合が多い。 英語の受動態は動作主を隠すのが目的なので、受動態の文で、"by someone" の形で動作主を表すことは、実際にはほとんどない。"by someone" をつけると、動作主がことさらに強調される。そのため、学術的な文章では、受動態はできるだけ避けるべきだとされる。受動態の文では、主語は隠されるか強調されるかのどちらかなので、文章が客観的ではなくなってしまう。 ただし、主語が長いために、受動態にして主語を後ろに持ってゆくという場合もある。英語でも日本語でもそうだが、主語と述語があまりに離れていると、文の意味がとりにくい。英語で、主語の後ろに主語を修飾する言葉がついていると、主語と動詞が離れてしまう。その場合、受動態にすると、動詞の直後に by をはさんですぐ主語がくるので、読みやすい文になる。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇〇九年 葉月 廿日 木曜日■ 費用は会社持ち [/language]英語に "on company dime" という表現がある。「会社の費用で」という意味だ。dime とは 10セント硬貨のことだが、この表現は "on company time"(勤務時間中に)と対にして使われることが多いので、time と dime で韻を踏んでいるわけだ。 なお、米国で一般的に使われる硬貨は、1セント、5セント、10セント、25セントの4種類で、それぞれ penny、nickel、dime、quater と呼ばれる。大きさは dime、penny、nickel、quater の順で、dime がもっとも小さい。"on a dime" と言うと、「非常に狭い場所で」または「すぐに」と言う意味になる。penny は色が違うのですぐに区別できるが、nickel より dime が小さいのには、私はしばらく慣れなかった。 1ドル硬貨 dollar coin はコイントスに使うので、常に持ち歩いている人がいる。50セント硬貨 half dollar もあるが、主にカジノで使われているそうで、私は見たことがない。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇〇九年 水無月 十四日 日曜日■ カンマにご用心 [/language]越前敏弥著『日本人なら必ず誤訳する英文 誤訳にもいろいろあるが、中でも意外に多いものに、and、or、not などの単語や句読点の用法の間違いがある。こういった文の構造を決める要素は、日本語の言葉と一対一で対応させることはできないので、英文法を理解していないと文の意味が取れない。 中でも句読点は、英語では決しておろそかにできないので注意がいる。日本語はそもそも句読点を必要とせず、単に読みやすくするためについているに過ぎない。漢文などは句読点がまったくついていないが、それでもちゃんと読める。しかし英語では、句読点のあるなしで意味が変わることがある。 最近もこんな「事件」があった。 Comma quirk irks Rogers @ The Globe and Mail 問題となっている契約書にはこう書いてある。 (The agreement) shall continue in force for a period of five years from the date it is made, and thereafter for successive five year terms, unless and until terminated by one year prior notice in writing by either party. この文はカンマで3つの部分に分けられている。第1に「この契約は締結日より5年間有効」とあり、第2に「その後は自動的に5年ずつ更新される」とある。そして第3の部分は「1年前に書面で通知することにより解約できる」という意味だ。 これを英語の文として解釈すると、第1の部分と第2の部分がひとまとまりになって、第3部分はその2つに対する但し書きとなる。つまり、契約を結んですぐ解約すれば、1年後に契約は無効になる。 しかし、この契約書を書いた側は、2つ目のカンマがないつもりでいた。このカンマがないと、第3部分の但し書きは、第2部分にのみかかる。つまり、最初の5年間は解約できず、自動更新の期間になってから、書面により1年後に解約できるようになる。 相手方は、契約書を適切に解釈して,最初の5年間が経過しないうちに契約を打ち切り、料金を値上げした。おかげで、契約書を書いた側は、カンマを1つ余計に書いたがために、およそ2億円も多く料金を支払うはめになった。 英語においては、こういったものは決して些末な問題ではなく、意味を取り違えると内容が正反対になってしまうことも多い。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] |
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