二〇一一年 師走 十二日 月曜日■ 「折り紙公理」の形式化・その6 [/origami]その5から続く。 そこで、ユークリッドのほかの公理も、折り紙述語 F(x, y, z) を使って書き換えてみたい。 第1公理は、2点があるときに両方の点を通る直線が存在するということだから、 ∀a∀b(∃l(F(l, a, a)∧F(l, b, b))) と書ける。 第2公理は、 ∀l∀m∀n(∃a∃b∃c∃d(¬(a = b)∧F(l, a, a)∧F(l, b, b)∧F(m, c, c)∧F(m, d, d)∧F(n, a, c)∧F(n, b, d))→∀e∃f((F(l, e, e))→((F(m, f, f)∧F(n, e, f)))) の公理と雰囲気が似ている。というのも、この公理は、直線上の2点を合わせれば直線全体が合うと述べているので、線分の両端を決めれば、その線分を延長できると解釈できないこともない。 第3公理については、そもそも円とは中心から等しい距離にある点の集合だから、点 a と点 b が与えられたとき、a を中心として b を通る円を描くということは、a と b とのあいだの距離だけ a から離れた点 c を作図するということに等しい。このとき、a を通る折り目で折れば b と c が重なるわけだから、次の公理が第3公理に相当すると考えることができる。 ∀a∀b(∃c∃l(F(l, a, a)∧F(l, b, c))) 第4公理に相当する公理は、P(l, m)→P(m, l) だとするのがよさそうだ。省略せずに書けば、 ∀l∀m(∃a∃b(¬(a = b)∧F(l, a, b)∧F(m, a, a)∧F(m, b, b))→(∃c∃d(¬(c = d)∧F(l, c, c)∧F(l, d, d)∧F(m, c, d))) となる。 第2公理から第4公理はかなりあやしいが、実際のところユーリッドの公理系自体が現代の数学から見れば不完全なので、これ以上厳密な議論をしてもあまり意味がない。この程度で議論を切り上げて、とりあえず現段階での公理系を書けば、次のようになる。 ・∀a∀b∀l(F(l, a, b)→F(l, b, a)) ・∀l∀m(P(l, m)→P(m, l)) ・∀a∀b(∃l(F(l, a, a)∧F(l, b, b))) ・∀a∀b(∃c∃l(F(l, a, a)∧F(l, b, c))) ・∀a∀b(∃c∃l(F(l, a, c)∧F(l, b, c))→(a = b)) ・∀a∀b(∃c∃d∃l(¬(c = d)∧F(l, a, c)∧F(l, b, d))→¬(a = b)) ・∀l∀m∀n(∃a∃b∃c∃d(¬(a = b)∧F(l, a, a)∧F(l, b, b)∧F(m, c, c)∧F(m, d, d)∧F(n, a, c)∧F(n, b, d))→∀e∃f((F(l, e, e))→((F(m, f, f)∧F(n, e, f)))) ・∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃a(F(l, a, a)∧F(m, a, a)∧∀b((F(l, b, b)∧F(m, b, b))→(a = b)))) ・∀a∀b∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃c∃d∃n(F(n, a, c)∧F(l, c, c)∧F(n, b, d)∧F(m, d, d))) この公理系は、ユークリッドの5つの公理に相当する公理を含んでいるのだから、ユークリッドの公理系で証明できる定理をすべて証明できることが期待される。もしもそうであれば、この公理系でユークリッド幾何学を再現できることになる。さらに、余分な公理もあるので、折り紙の公理系がユークリッド幾何学を越える可能性もある。しかし、すでに述べたように、ユークリッドの公理系自体が不完全なので、話はそう簡単には進まない。 その7に続く。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇一一年 師走 十一日 日曜日■ 折り紙ティーセット [/origami]origami-l で Karen Reeds さんが紹介していた。 日本人デザイナー Yuya Ushida の作品。各パーツが一枚折り。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇一一年 師走 十日 土曜日■ 「折り紙公理」の形式化・その5 [/origami]その4から続く。 ここまでのところ、次の公理からなる公理系を作ったことになる。 ・∀a∀b∀l(F(l, a, b)→F(l, b, a)) ・∀a∀b(∃c∃l(F(l, a, c)∧F(l, b, c))→(a = b)) ・∀a∀b(∃c∃d∃l(¬(c = d)∧F(l, a, c)∧F(l, b, d))→¬(a = b)) ・∀l∀m∀n(∃a∃b∃c∃d(¬(a = b)∧F(l, a, a)∧F(l, b, b)∧F(m, c, c)∧F(m, d, d)∧F(n, a, c)∧F(n, b, d))→∀e∃f((F(l, e, e))→((F(m, f, f)∧F(n, e, f)))) ・∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃a(F(l, a, a)∧F(m, a, a))) ・∀a∀b∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃c∃d∃n(F(n, a, c)∧F(l, c, c)∧F(n, b, d)∧F(m, d, d))) さて、公理系と言って多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、ユークリッドの公理系だろう。ユークリッドは、『原論』で次の5つの公理を挙げた。 1. 任意の点から任意の点に、直線を引くことができる。 2. 与えられた有限の直線を、どちらの側にもいくらでも延長できる。 3. 任意の点を中心とする、任意の距離の円を描くことができる。 4. すべての直角は互いに等しい。 5. ある直線が他の2直線に交わり、その1つの側の内角の和が2直角より小さいとき、それらの2直線をその側に延長すると、いつかは交わる。 この中でもっとも有名な第5公理は、実質的には「2本の直線は、どちらももう1本の直線に垂直であるか、1点で交わるかのどちらかだ」ということを言っている。したがって、上に挙げた公理のうちの1つ ・∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃a(F(l, a, a)∧F(m, a, a))) とよく似ている。この公理は「2本の直線は、どちらももう1本の直線に垂直であるか、交わるかのどちらかだ」と言っているので、「交わるときは交点は1つだけだ」ということをつけ加えてやれば、実質的に同じになる。実際に加えてみると、 ・∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃a(F(l, a, a)∧F(m, a, a)∧∀b((F(l, b, b)∧F(m, b, b))→(a = b)))) となる。これで、ユークリッドの第5公理に相当する公理を、述語論理の記号と等号、そして折り紙述語 F(x, y, z) だけを使って書けたわけだ。 その6に続く。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇一一年 師走 三日 土曜日■ 「折り紙公理」の形式化・その4 [/origami]その3から続く。 これで、7つの折り方のうち5つまでが出そろったことになる。残る2つは、公理と F(l, b, b)∧F(m, a, a) とから導きたいが、そのためには公理を追加する必要がある。以下の公理を追加しよう。 ・∀a∀b∀l(F(l, a, b)→F(l, b, a)) ・∀a∀b(∃c∃l(F(l, a, c)∧F(l, b, c))→(a = b)) ・∀a∀b(∃c∃d∃l(¬(c = d)∧F(l, a, c)∧F(l, b, d))→¬(a = b)) ・∀l∀m∀n(∃a∃b∃c∃d(¬(a = b)∧F(l, a, a)∧F(l, b, b)∧F(m, c, c)∧F(m, d, d)∧F(n, a, c)∧F(n, b, d))→∀e∃f((F(l, e, e))→((F(m, f, f)∧F(n, e, f)))) それぞれ、 ・直線 l で折ったときに点 a と点 b が重なるならば、直線 l で折ったときに点 b と点 a が重なる(対称性)。 ・直線 l で折ったときに、点 a と点 c が重なり、かつ点 b と点 c が重なるならば、点 a と点 b は等しい(1つの点が複数の点と重なることはない)。 ・直線 l で折ったときに、点 a と点 c が重なり、点 b が点 c とは異なる点 d と重なるならば、点 a と点 b は異なる(複数の点が1つの点と重なることはない)。 ・直線 n で折ったとき、直線 l 上の2点 a と b が直線 m 上の2点 c と d にそれぞれ重なるとき、直線 l 上の任意の点が直線 m 上のいずれかの点に重なる(直線上の2点を合わせて折れば、直線全体が合う)。 を意味する。 すると、 ∀a∀b∀l∀m(∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃c∃d∃n(F(n, a, c)∧F(l, c, c)∧F(n, b, d)∧F(m, d, d))) から、a、b、l、m を所与とし、F(l, b, b)∧F(m, a, a) を仮定すると、 ∃n(P(l, n)∧P(m, n)∧F(l, b, b)∧F(m, a, a))∨∃c∃d∃n(F(n, a, c)∧F(l, c, c)∧F(n, b, d)∧F(m, d, d)∧F(l, b, b)∧F(m, a, a)) が言え、(a = d)∨¬(a = d) であることから、 ∃n(P(l, n)∧P(m, n))∨∃n(F(n, a, b))∨∃n∀e∃f((F(l, e, e))→((F(m, f, f)∧F(n, e, f)))) が言える(追加した公理によって (a = d)→(b = c) が成り立つことに注意)。これは結局、「2つの点 a、b と平行でない2本の直線 l、m があり、a が m の上にあり、b が l の上にあるとき、『a を l の上に乗せ、b を m の上に乗せるように折る』という折り方は、『2つの点を合わせるように折る』か『2本の直線を合わせるように折る』のいずれかである」ということだ。 その5に続く。 [この記事だけを読む。] [この記事にコメントを書く。] [最新の記事を読む。] 二〇一一年 霜月 廿五日 金曜日■ ジョセフ・ウーさんのインスタレーション [/origami]先週末の折紙探偵団名古屋コンベンションに参加された方はご存知かもしれないが、Joseph Wu さんがバンクーバー水族館のためにインスタレーションを制作した。この展示は生物発光をテーマにしており、Wu さんが創作・制作したのはハダカイワシとクラゲ。期間は 1 月 2 日までとなっているが、すでに延長が計画されているそう。 なお、ハダカイワシは英語で lanternfish という。光るから「ランタン魚」。ところが、Google の画像検索で lantern fish を検索すると、ハダカイワシに混ざってチョウチンアンコウの画像がたくさん見つかる。ハダカイワシはチョウチンアンコウより知られていないので、lantern fish と聞くとチョウチンアンコウだと思ってしまう人が多いようだ。チョウチンアンコウは正しくは anglerfish(釣りをする魚)。 ハダカイワシは、あまり知られていないものの、生物量としては非常に多く、深海魚の 65% を占めるという。昼間は深海にいて夜は水面近くまで上がってくるので、深海と浅海の栄養循環を担う魚として重要だそうだ。人間が食べても美味しいらしい。 [この記事だけを読む。] 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