二〇一四年 卯月 二日 水曜日■ 日本人はなぜ英語ができないか・その3 [/language]この記事は書かれてから1年以上経過しています。内容が古くなっている可能性があります。コメントの受付は終了しました。 その2から続く。 翻訳家になるためには訳し分けの習得が必要と書いたが、まともな翻訳家なら、やはり規則を覚えて当てはめるという方法は取っていないはずだ。翻訳をしていれば、規則を当てはめたのではうまく訳せない文に出くわすことがよくある。翻訳家の頭の中では、英語の文が日本語の文に直接変換されているのではない。それで翻訳ができるなら、今ごろ自動翻訳でまともな翻訳ができるようになっているはずだ。 英語の文から、まずは内容が読み取られる。しかし、それを直接日本語の文として出力するのでもない。英語の文から読み取られた内容は、英語による世界の見方を前提とした内容であり、それをそのまま日本語にすることはできない。 例えば、現在完了形は、過去に起きた出来事が現在に影響を及ぼしていることを意味する。また、定冠詞は、それが具体的に何であるかを受け手(読み手や聞き手)が了解しているはずだということを意味する。ということは、英語話者は、過去の出来事が現在に影響を及ぼしているかいないか、自分が話題としている対象を受け手が「これ」と指差せるような形で了解しているかいないかを、常に意識し区別しているのだ。日本語話者はそのようなことをいちいち区別しないので、現在完了形や定冠詞に対応する内容は、そもそも日本語の世界に存在しない。 そうすると、英語から日本語へ翻訳する場合の流れは、英語の文→英語の世界における内容→日本語の世界における内容→日本語の文となる。日本語から英語なら、これを逆にたどる。 ここで、日本語の世界における内容と日本語の文との行き来は、日本語話者ならある程度自由にできる(人によって上手下手はあるが)。英語の世界における内容と日本語の世界における内容との変換は、翻訳における肝であるが、翻訳家を目指しているのではない一般の人にとっては、この変換を習得することは時間の無駄だ。英語を効率的に勉強するためには、英語の世界における内容と英語の文との行き来の練習にしぼるべきだ。 言い換えると、英語を勉強するときは、できるだけ英語の世界で閉じるようにした方がよい。英語を日本語に変換してから理解するのではなく、英語の文を英語の世界観の下に理解すれば、英語が早く上達するはずだ。日本の学校の英語教育は、英語の世界で閉じていないので、効率が悪い。 その4に続く。 |
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