二〇〇六年 師走 十七日 日曜日■ 第1回折り紙の数学・科学・教育研究集会 [/origami]この記事は書かれてから1年以上経過しています。内容が古くなっている可能性があります。コメントの受付は終了しました。 本日、東京の JOAS ホールにて、「第1回折り紙の数学・科学・教育研究集会」が開かれた。今年 9月にパサデナで開かれた 4OSME には、日本人も多く参加し、次回は日本で開くことを期待する人も多い。そのための準備も兼ねて、今後定期的に開かれる予定だ。 今回は、第1回ということもあり、錚々たる講演者がそろった。参加者も多く、盛況だったし、私個人も、4OSME で聞き損ねた講演が聞けて、楽しめた。以下、私の個人的な観点から、各報告を紹介する。ノートを取っていなかったので、まちがいがあったらご容赦を。 最初の講演者は三浦公亮さん。有名な「三浦折り」が生まれた経緯などが話された。平らで無限に広いシート状の物体に、面に沿って縮める力を加えたら、どうなるか。物理的に考えると、エネルギーがもっとも低い形になるはずで、三浦さんはエネルギーを計算するのにコンピュータを使ったのだが、1970 年代のコンピュータは今ほど手軽に使えるものではなかったから、実際に計算する前にあらかじめ当たりをつけておく必要があった。そこで三浦さんが注目したのが、円筒をつぶしたときにできる吉村パターンだった。円筒の外側から、つまり凸の側から見た吉村パターンと、円筒の内側、凹の側から見た吉村パターンとをつなぎあわせると、その境目に、平坦な面をつぶしたパターンができるのではないか、と考えたそうだ。実際計算してみると、まさにその通りで、それが三浦折りとなったそうだ。 なお、吉村パターンは、現在飲料の缶に応用されているが、これは三浦さんが特許をとっていた。しかし、当時はそれを製品化する技術がなく、製品化されたときには特許は切れていたそうだ。 2人目の講演者は池上牛雄さん。フラクタルピラミッド、コッホ曲線の折り畳み、コッホ雪片へのアプローチが紹介された。池上さんは、おそらく世界でただ1人、本当のフラクタル折り紙を折っている。展開図を見ていると、有限の面積の中に無限の長さの曲線が含まれている(らしい)ことが実感できて、興味深い。しかし、無限に折られる領域の集合がフラクタルであることは確かだとしても、折り紙作品自体がフラクタルだと言えるのか、よく分からない。今後の研究が楽しみだ。 3人目の講演者は舘知宏さん。折り紙を折り畳むシミュレーションと、立体的な作品の設計法の2本立てだった。シミュレーションは、見た目にインパクトがある。基本的には、剛体折り紙を、展開図から一気に畳むものだが、折る途中で曲げる必要のある面を複数の三角形に分割したり、2度に分けて折る必要のある点をずらしたりすることで、多くの折り紙に対応している。しかし、まだ対応していない折り紙も多い。これも、今後の研究が楽しみだ。 設計法について言えば、私は、舘さんのものにかぎらず、いわゆる折り紙設計一般について、造形がペーパークラフト的だと感じていて、だったら切ればいいじゃん、と思ってしまう。切らなければ折り紙で、切ったらペーパークラフトだというものではないでしょう、と思うのだが。 最後の講演者は三谷純さん。数々の興味深い話題を話してくださった。古田陽介さんのシミュレーションは、紙を面としてとらえるのではなく、バネでつながった頂点の集まりとして扱っている。メッシュを細かくしたら、紙の張力も再現できるだろうか。 ORIPA 0.2 のデモも面白かったが、展開図が与えられたときに可能な完成形を数えるという研究が興味深かった。兜の場合は、ほかにも8通りの折り方が可能だが、折り鶴の完成形は1通りしかないそうだ。 三谷さんのように、もともと折り紙プロパーでない人が折り紙に参入すると、折り紙の世界がぐっと広がる。うれしいことだ。 2006年12月19日追記 三谷さんから学会によせられたメッセージによると、折り鶴の展開図を半分だけ考えた場合、可能な完成形は1通りだが、折り鶴の展開図全体では、必ずしも1通りにはならないそうだ。 タトさんのコメント: 羽鳥さんのコメント: 川崎さんのコメント: タトさんのコメント: 川崎さんのコメント: 川崎さんのコメント: 羽鳥さんのコメント: |
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