二〇一一年 卯月 十五日 金曜日■ 福島原発事故について・その1 放射線が人体に与える影響 [/links]この記事は書かれてから1年以上経過しています。内容が古くなっている可能性があります。コメントの受付は終了しました。 世の中には「放射能がうつる」などと言って福島県民を差別する無知な人がいるようで、しかしその責任は、適切な情報を適切なときに発信しない政府やマスコミにあると思う。そこで私も、微力ながら、何もしないよりはましだろうと、筆を執った次第。 放射線は人体に影響を与える。決して安全なものではないが、かと言って、過度におそれる必要もない。 放射線と一口に言っても、α線やらβ線やら何種類かあるのだが、おおざっぱに言って、ごく小さな粒が非常に速いスピードで飛んでくると考えればよい。あまりに小さいので、目には見えないし、ぶつかっても痛くない。でも、一度に大量の放射線を浴びると、体内の細胞が破壊される。たくさんの細胞が破壊されれば、当然死んでしまう。少ない量の放射線でも、細胞の中の遺伝子が破壊されることがある。遺伝子が破壊されると、癌などの病気になることがある。 「シーベルト」という単位をよく聞くようになったが、これは放射線が人体に与える影響の大きさを表す。大まかに言って、1シーベルト(=1000ミリシーベルト=100万マイクロシーベルト)の放射線を浴びると、細胞が破壊され始める。1シーベルト以上の被曝では、数日から数か月程度で症状が出たり死んだりする。しかし、日常生活の中で1シーベルトの放射線を浴びるという状況は、まったく考えなくてよい。 では、それより少ない放射線を浴びた場合はどうか。この場合、細胞は破壊されないとしても、遺伝子が破壊される可能性がある。それで症状が出たり死んだりするのは、数年から数十年後になる。政府や学者が「直ちに健康に影響はない」と言うのは、ある意味正しいが、まったく無意味だ。こんな言葉を聞いて安全だと思ってはいけない。 100ミリシーベルト以上の放射線を浴びると健康に害があるということはほぼ確実だが、それ以下の放射線量による健康への影響については、研究者の間で意見が分かれている。国際放射線防護委員会(ICRP)が、放射線の量と癌になる確率とがほぼ比例するという説をとっているので、私もこの説をとりたい(ICRPはどちらかというと原子力を推進する団体だ)。 放射線の量と癌になる確率とが比例するということは、健康への影響を0にしようとすれば放射線量も0にしなければならない。それは不可能なので、どこかで線を引かなければならない。ICRPの2007年勧告では、一般の人が浴びてよい放射線量は5年間の平均で年間1ミリシーベルト以下となっている。時間あたりにすると、平均で毎時およそ0.1マイクロシーベルト以下になる。 ただし、年間1ミリシーベルト(毎時0.1マイクロシーベルト)という値は、自然放射線を除いた値だ。実は、自然界にも放射線があって、人間は日々放射線を浴びている。その量は、地域によって違うが、世界平均が年間2.4ミリシーベルトと言われている。日本の多くの地域はそれより少ない。 人間を含む生物は、このように日々放射線を浴びるような環境で進化してきたので、微量の放射線には耐性がある。まず、放射線によって遺伝子が破壊されても、細胞の中には遺伝子を直す仕組みが備わっている。また、遺伝子の修復が間に合わなくて癌細胞ができたとしても、体内の免疫系には癌細胞を殺す作用がある。 したがって、年間1ミリシーベルト以下なら安全と考えてよいし、それを多少超えても、健康な大人なら問題がない。ICRPは、「個人が直接、利益を受ける状況」では年間20ミリシーベルトまで許容できるとしている。栄養のあるものを食べて、十分な睡眠を取っていれば、多少の放射線は気にする必要はない。放射線を気にして不安な日々を過ごしていると、免疫力が落ちるので、癌に対する抵抗力も落ちるし、ほかの病気にもかかりやすくなる。 とは言え、誰もが健康な大人であるわけではない。特に子供や胎児は放射線の影響を受けやすい。また、万一、生殖細胞(精子や卵子になる細胞)の遺伝子が破壊されると、これから生まれてくる子供に影響が出る可能性がある。だから、子供や妊婦、そしてこれから子供を産むかもしれない人は、年間1ミリシーベルト以下の基準に従うべきだと私は思う。 その2へ続く。 |
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