blog.鶯梭庵

二〇〇六年 文月 卅日 日曜日

折り紙の著作権を再び考える・その7

その6から続く。

そもそも折り紙作品は著作物なのか、という問題をもう一度考えたい。著作物は表現でなければならないし、創作性がなければならない。ということは、創作性のある表現でなければならないわけで、リアルな昆虫や恐竜などは、手順やアイディアが創作的であることは間違いないが、表現に創作性があるとは言えないのではないか、それゆえ、著作物にならないのではないか、と考えたのだ。

ウェブを検索してみると、興味深い判例が見つかった。いわゆる「食玩」の原形を制作した海洋堂と、それを製造販売していたフルタ製菓とのあいだで争われた裁判の控訴審判決(PDF)。

フルタ製菓は、海洋堂と著作権使用許諾契約を結び、食玩の製造販売をしていたが、製造数量を過小に報告したため、海洋堂から違約金を請求された。そこで、フルタ製菓は、そもそも海洋堂の原形は著作物ではないので契約自体が無効だと訴えた。

それに対する判決は、私なりに簡単にまとめると、以下の通り。

海洋堂の模型原形は美術品だと認められるけれど、美術品であっても、鑑賞を目的とするものであるかどうか、観る人によって判断が分かれるような場合は、純粋美術として無条件に著作権法で保護することは、予測可能性を害するものであって、相当ではない。海洋堂のフィギュアのうち、妖怪フィギュアについては、空想上の妖怪を造形したものであり、高度の創作性が認められ、一般的な美的鑑賞の対象となるということができるので、応用美術の著作物に該当する。一方、動物フィギュアとアリスフィギュアは、実際の動物やテニエルの挿し絵を忠実に再現した模型であり、創作性が高くないといわざるをえないので、著作物には該当しない。しかし、このような契約は著作権使用許諾契約に特有のものではなく、本件においては、著作物性は契約の要素となっていなかったと認められる。したがって、本契約は有効であり、フルタ製菓は違約金を支払え。

私が注目した点は2つ。第1に、実物や他人の著作物を精巧に再現した折り紙は、著作物にならない可能性が高いということ。デフォルメをしたとしても、それが美術性を高めるためではなく、製造工程上の理由である場合には、創作性があるとは認められない。第2に、仮に折り紙作品が著作物でないとしても、双方合意の上でロイヤリティ契約を結べば、それが法的拘束力を持つということ。前回の記事で、創作家が、自分に著作権があるつもりで契約をしても、実は著作権がないとしたら、違法な契約は法的拘束力を持たないから、その契約が無効になりかねない。と書いたが、しっかりした契約を結ぶ限り、その心配はない。

コメント (2件)

リアルである、精巧であるということは創作性とは関係ないのではないかと思います。たとえばラング氏のリアルな動物・昆虫郡は表現的に創作性が高いです。表現に創作性があるというのは、折手や創作家によって表現が異なることから見てもあきらかでしょう。

そういう観点から見ても、表現の創作性でより問題となりそうなのは、むしろ抽象的であったりシンプルな折り紙だと思います。

著作権法の文脈では、創作性があるとは、模倣ではないということです。一方、精巧な模型は、実物を模倣したものです。したがって、精巧な模型の創作性は低くなります。

一般に、著作物であるためには、作者の個性が何らかの形で表れていれば十分だとされます。しかし、応用美術の場合は、高度な創作性が必要です。どの程度高度でないといけないかというと、海洋堂の動物はダメで、妖怪はOKという程度だということです。

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