blog.鶯梭庵

二〇〇八年 皐月 九日 金曜日

伏見康治さん逝去 [/origami]

昨日、伏見康治さんが亡くなった。物理学での業績も多大だが、折り紙においても、折り紙の幾何学を刊行するなどの功績を残した。慎んでご冥福をお祈りする。

伏見康治氏死去=元日本学術会議会長

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二〇〇八年 皐月 三日 土曜日

折り紙の自由度と悩み [/origami]

小松英夫さんのエントリ「なぜ蛇腹人物か」と「折り紙造形について」を興味深く読んだ。

私の考えは、コメントを寄せている S.N. さんに近い。自由な曲線が欲しければ、切ればいいじゃないか、と思う。切ったところで、完全に自由になるわけでもないのだが(あまり細いところがあると、ちぎれてしまう)、ほかの造形手法と比べて特別不自由ということはなくなる。

切るというのは極端だとしても、私が思うに、「折り紙的な造形」は不自由かもしれないが、「折り紙の造形」は決して不自由ではない。「折り紙的」であるためには、パズルとしての面白さや折り心地などといった、造形とは直接かかわらない要素が必要で、それらと造形とを両立させようとすれば「悩み」が生じるが、その悩みはすべての折り紙に必要なものではない。

小松さんは「折り紙的」であることを重視しているわけだが、それは紙を折る人の方を向いているからだと思う。だから、普通の人にとってはそれほど価値はないと思っている造形を、かっこいいと思うことができるのだろう。それはそれで1つの方向だが、ポール・ジャクソンやジャン=クロード・コレイアの作品は、まったく別の方向を向いている。彼らの作品には、小松さんのいうような悩みはない。

別の方向を向いたとき、折り紙の造形は、ほかの造形手法と同等の自由度を持つ。絵画にしても、現実の世界が3次元であるのに対し、絵画は2次元だから、次元が丸々1つ欠落しているわけだ。しかし絵画は、北宋の山水画や印象派以降の西洋絵画に見られるように、その欠落を逆手にとって、絵画にしかできない造形を生み出してきた。

同じように、折り紙に存在する欠落を不自由さと見ず、むしろ可能性と見た場合、本当に造形を目的として折り紙を選ぶということが意味を持つ。もっとも、それはそれで新たな悩みを生むのだけれど。

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二〇〇八年 卯月 廿九日 火曜日

Animals out of Paper [/origami]

5月23日から6月1日まで、バンクーバーの Roundhouse Performance Center で、Pangaea Arts 制作の The Life of Paper が上演される。Joseph Wu さんが制作にかかわっている。

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二〇〇八年 卯月 廿七日 日曜日

「青少年ネット規制法案」の非現実性 [/links]

自民党と民社党がそれぞれ、いわゆる「青少年ネット規制法案」を準備しているそうだ。私は法案を読んだわけではないが、津田大介氏の記事小寺信良氏のコラムを読むと、自民党案はまるで非現実的な法案のようだ。こんなものを作ったところを見ると、自民党の議員はコンピュータやインターネットのことをまるで知らないのだろう。

まず、有害なコンテンツを判断する基準は内閣府の独立行政委員会が決めるのだという。これが具体的にどのような基準になるかは分からないが、そのままフィルタリングソフトに実装できるような基準を作ることは、現実として不可能だ。ウェブ上のコンテンツというのは、サイト単位やページ単位ではなく、ブログのエントリや掲示板の書き込みの単位で増えるのだから、日本だけでも1秒に数コンテンツでは収まらないだろう。それにリアルタイムでついていく基準を作るのは、ある程度抽象的なものにするとしても難しい。

仮に抽象的な基準ができたとしても、それではフィルタリングソフトは動かない。コンピュータは抽象的な指示は理解できない。では、現状のフィルタリングソフトの能力はどうかというと、Google ですら検索結果から有害なサイトを排除するのに四苦八苦している状態で、有害コンテンツと有益なコンテンツを区別できるフィルタリングソフトは存在しない。フィルタリングソフトを義務化すれば、有益なコンテンツの多くにアクセスできなくなる。

また、ISP や PC メーカーにフィルタリングを義務付けているのだが、携帯電話ならいざ知らず、複数の人が共有することの多いコンピュータや回線では、自分が販売するコンピュータや自分が提供する回線を使っている人が 18 歳以上であるかどうかを感知するすべはない。まさか年齢にかかわらずすべての人にフィルタリングを適用するわけにはゆかないだろうから、フィルタリングの機能だけを用意しておいて、必要な場合は有効にしてください、とするほかはないだろう。

Mac OS X にはペアレンタルコントロールという機能があるが、こういう形態ならば現実的に対応できる。しかしその場合、子供が自分から進んで設定するとは考えにくいから、親が設定することになる。設定ができるだけのコンピュータリテラシーと時間を持っている親が、この日本にどれだけいるだろうか。

さらに、サイト上の有害コンテンツを子供に見せないようにする義務をサイト管理者に課しているところを見ると、この法案を作った人は誰一人として CGM とか UGC といった言葉を知らないのだろう。Web 2.0 の世界では、サイト上のコンテンツは、サイト管理者がアップロードしたものばかりではなく、ユーザーがアップロードすることも多い。そして、現実問題として、ユーザーの中には悪意を持った人が少なからずいるのだ。

このブログでは、スパムコメントは1日10件程度で、そのほとんどは単純なフィルタリングではじいているから、悪意を持ったコンテンツを制御できているが、大規模な CGM サイトになれば、コンテンツ管理が追いつかないのは必至だ。著作権法であれば、違法コンテンツをアップロードした人の責任を問えるが、この法案では、有害コンテンツをアップロードした人はお咎めなしだ。これはまったく馬鹿げている。

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二〇〇八年 卯月 廿六日 土曜日

「住職」を英語で [/language]

英辞郎で「住職」を引いてみたところ、"resident priest" という訳が載っていた。この英語を文字通り訳すと「住み込みの僧侶」ということで、「住職」をそのように解釈したのだろうが、これは誤りだ。(修正依頼を出しておいたので、次回の改訂時には直っているだろう。)

「住職」というのは、「住持職」の略で、寺の長である僧を意味する。「住持」とは仏法を守護することで、寺に住むこととは関係がない。したがって、英訳としては "chief priest" や "head priest" が適当だ。

日本語にしかない概念を外国語に訳すときには、まずその日本語を正確に理解することが必要だ。普段日本語で生活をしていても、言葉の正確な意味は案外分からないものだ。「見立て」のときもそうだったが、日本語独自の言葉については、和英辞典を引く前に国語辞典を引くとよい。

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