blog.鶯梭庵

二〇〇四年 長月 七日 火曜日

見立てについて・予告的な疑問

小松さんの記事なぜ動物なのかをうけて、折り紙における見立てについて書こうと思ったら、折り紙の本質にかかわる(あるいは芸術の本質にかかわる)議論になりそうなので、今日は一言だけ。小松さんには折り図を描いてもらいたいたいし。:-)

「首を折らなければ鶴ではない」と思う人が、「足を下向きに折らなければ鶴ではない」とか「尻尾を短く折らなければ鶴ではない」とは思わないのはなぜだろう。

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二〇〇四年 長月 五日 日曜日

なぜ動物なのか

紙を折ると、何らかの形ができる。それが折り紙だ。折り紙が折り紙であるためには、それで十分なのだ。それなのに、ある折り紙を動物に見立てるというのは、どういうことなのだろう。

折り紙の素材は紙だ。それは植物からつくられる。植物の繊維が、水分子の水素結合によって結びつけられたもの。

折り紙の折りはじめの形は、多くの場合正方形だ。4本の直線と4つの直角からなる、極めて無機的な形。そういえば、フレーベルの教育論では、球が自然の形の象徴、立方体が人工の形の象徴である。

紙を折る、ということは、無機的な形をした植物の繊維の塊を折る。すると何らかの形ができる。紙を折ってできる形は、もともとの無機的な形の中に内包されていたものである。紙がもともと持っている可能性を越えた形を作ろうと思ったら、紙を切ったり貼ったりしなければならない。

その形が花のように見えたら、正方形の紙の中に花の形が潜んでいたことに驚く。種の中に花が潜んでいることが驚くべきことであるように。それはまるで、大自然の神秘を手の中で再現したように感じられる。

その形が動物のように見えたら、これは自然の神秘どころではなく、魔術である。手品師が何もないところから鳩を出すように、無機的な植物の塊から動物をつくる。不可能を可能にする技としての折り紙。

折り紙を動物に見立てようとする人は、おそらく、このような折り紙の錬金術的要素に魅かれているのだろうと思う。


2004年9月20日追記 正方形の紙を「無機的な形」というと、そこでの「形」というのは、幾何学的な輪郭を指しているように読めてしまうかもしれない。正方形が極めて無機的だとしても、正方形の紙を無機的だというのは、ちょっといい過ぎだった。正方形の紙は「単純な形をした植物の繊維の塊」というほうがよいだろう。

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二〇〇四年 葉月 廿七日 金曜日

千羽鶴問題・問題の整理

2004年10月14日追記 原文は2004年10月12日の事故により失われてしまったが、小松さんの記事からリンクが張られていることもあり、記憶をたよりに書き直した。


千羽鶴について考え始めたきっかけは、小松さんの fold/unfold

千羽鶴を折るときに、首を折ってはいけないという人がいる。その一方で、首を折らなければ鶴ではないという人もいる。この違いは何だろう。

千羽鶴の首を折ってはいけないという「ルール」は、たくさんの人が折った折り鶴を千羽鶴にまとめるという必要性から生まれたものだろうということは容易に想像できる。折り鶴というのは、首を折るところまでは誰が折っても大体同じ形になって、首を折るところで個性が出る。だから、折り鶴を折るときにいちばん面白いのは首を折るところだともいえるのだけれど、千羽鶴としてまとめるときには、個々の折り鶴に個性があっては、まとめるのが難しいし、まとめたときの見た目もよくない。

ところが、首を折らないというルールについて、「首を折るのは縁起が悪いから」という理由づけがなされることがある。ここに一つ問題がある。とはいうものの、よく考えてみれば、こういうことは折り紙以外でもよくある話で、もったいぶったいい方をすれば、ある言説が類推によって別の言説と結びつき、新しい言説が生まれ、それが繰り返される。「千羽鶴に黒を使ってはいけない」「首は願いがかなったら折る」といった言説も、これで説明できる。これを社会学的に研究すれば面白いかもしれないが、折り紙的な興味はないと思う。

もう一つ別の問題があって、首を折らないルールを受け入れる人と、それは変なルールだと考える人がいる。このルールを受け入れる人にとって、折り鶴は、鶴のアイコンではなく、健康・平和・成功などを表すシンボルであるから、それが鶴の外見に似ていることはあまり重要ではない。ところが、このルールを変だと感じる人は、千羽鶴の中の一羽一羽の折り鶴に対して、それが鶴に見立てられること、あるいは何らかの動物に見立てられることを求めている。しかしそれは、見立ての欲求が強すぎるというべきではないだろうか。

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