blog.鶯梭庵

二〇〇五年 神無月 廿五日 火曜日

ヨーロッパの古い折り紙

David Lister が origami-l に投稿したメールによると、彼は、とあるアメリカ人から、1440 年ごろのオランダの史料に折り紙の箱が描かれているものを受け取ったという。詳しいことはこれから書くということだが、15 世紀ヨーロッパの折り紙らしき史料としては、1490 年にベニスで印刷された書物に船らしきものが描かれているものに続き、2例目となる。

史料が1つだけでは、15 世紀ヨーロッパに折り紙があった証拠としてはいかにも弱かったが、2例目が見つかったとなると、船の絵も折り紙のような気がしてくる。

ちなみに、日本の折り紙については、礼法折り紙がおそらく 14 世紀後半には成立していただろうと私は考えているが、14 世紀および 15 世紀の史料は、帖紙を別にすれば、私は寡聞にして知らない。

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二〇〇五年 神無月 二日 日曜日

折り紙の中の西洋

折り鶴は間違いなく日本で生まれたのだろうが、折り鶴を折るときに、何も考えずに市販の折り紙用紙を使っていながら、「折り紙は日本の文化だ」などというのは、やめた方がいい。折り紙用紙のほとんどは洋紙ではないか。

日本の折り紙は、和紙文化の中から生まれたものだ。江戸時代に日本で生まれた折り紙作品の中には、洋紙でうまく折れないために、現代に伝承されていないものがある。洋紙の「折り紙用紙」が広く使われるようになったために、大正時代以降の折り紙は大きな変化を余儀なくされた。

洋紙と和紙の違いには、敏感になるべきだ。折り鶴を洋紙で折るときに、子供が遊びで折るのならどう折っても構わないが、本格的に折ろうとするなら、江戸時代に和紙で折っていた折り方と同じように折って済ませられるわけがない。和紙で折るときの折り方と、洋紙で折るときの折り方は、おのずから違ってくるはずだ。それは、微妙な違いかもしれないし、はっきり分かる違いかもしれない。羽ばたく鳥や、いわゆる韓国式折り鶴は、折り鶴を洋紙で折ろうとしたときにできたものであろうと私は考えている。

現在では、折り紙には洋紙を使うことが多い。それに加えて、現在伝承されている作品には、ヨーロッパで生まれて明治時代以降に日本に伝わったものが少なくない。ヨーロッパにも折り紙の伝統があるということは、あまり知られていないが、疑いようのない事実である。折り紙というのは、日本の文化ではなく、日本文化と西洋文化の雑種である。(中国や韓国に、日本やヨーロッパと同じぐらい古い折り紙の伝統があるかどうかは、私は寡聞にして知らない。)

日本人が折り紙を本格的に折ろうとしたときに求められることは、現代の折り紙に流れる日本の血と西洋の血の両方を意識した上で、日本人としてどう折り紙に向き合うかということを考えることであろう。

コメント (1件)

私の父がもう60年近く和紙を折っていて、和紙で折ったものには角でなく隅があり、それに対して洋紙の角はたまらなくシャープ、というようなことを言っています。うまく表現できませんが和紙のほうが概して包容力があるような気がします。ただ、値が高い、手を出しにくくなる、需要が減る、ますます値段が上がる、あるいは作り手が減る、質が落ちる、など、和紙が遠いものになってきている現状をどうしたものかと思うのですが。

紙の文化の交流は大変興味深いテーマで、書籍や絵画の中にヒントがないかと目を凝らして見ています。「雑種」の方が個人的には「血統書付き」より好きです。

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二〇〇五年 葉月 十日 水曜日

Mighty Mouse とマジックと折り紙の不思議な関係

Mighty Mouse のコードネームは Houdini というそうだ。Harry Houdini は「脱出王」の異名をとるマジシャン。1926 年に舞台上の事故が元で世を去っているが、今でもアメリカを代表するマジシャンの1人。

この Houdini には、Houdini's Paper Magic という著書がある。David Lister によると、1922年に出版されたこの本には、蛇腹に折った紙をいろいろな形に変える Troublewit や紋切り、さらには羽ばたく鳥、蛙、兜、財布(めんこ・糸入れとも)およびそれを6つ貼り合わせてつくる玉手箱などが収められているという。

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二〇〇五年 文月 四日 月曜日

折り紙はなぜ「折り紙」なのか

今日は成田からフランクフルト経由でザルツブルクに向かった。

フランクフルト行きの飛行機の中で、黒川伊保子怪獣の名はなぜガギグゲゴなのかを読んだ。日本語の音が潜在意識に与える印象について述べているのだが、この研究を「折り紙」とその古い言い方である「折り据」「折り形」「折り物」にそれぞれ当てはめてみたら、面白かった。

この本によると、「お」は存在感、「り」は透明感を感じさせる。「す」は健やかさ、「え」は奥ゆかしさを感じさせるので、「折り据」は上品な感じがする。「か」と「た」はどちらも固さ・強さを感じさせるから、「折り形」はお堅いイメージになる。「も」は豊満さ、「の」はナイーブさを感じさせるので、「折り物」ではオンナコドモのするものというイメージになる。いずれも限定的な訴求力しか持たないのに対して、「が」は男性的な興奮、「み」は親密感を感じさせるので、「折り紙」は老若男女に強くアピールする。

そう考えると、4つの言葉の中で「折り紙」が残ったというのは、単に音の響きがよかったせいだと思えてくる。

なお、“origami” が国際語になったのは、リリアン・オッペンハイマーさんがこの言葉の響きを気に入って広めたからだ。日本語の音が持つこのような効果は、外国人にもある程度あてはまるのだろう。

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二〇〇五年 水無月 廿八日 火曜日

折り紙の歴史・韓国語版

Korea Paper Folding Research Center の jassu さんが、私の書いた折り紙の歴史韓国語に翻訳してくれた


2005年7月21日追記 URL が変わったそうだ。

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