blog.鶯梭庵

二〇〇九年 皐月 卅一日 日曜日

コンポージアム2009「武満徹作曲賞本選演奏会」@ 東京オペラシティコンサートホール [/music]

毎年好例のシリーズ。今年の審査員はヘルムート・ラッヘンマン。演奏は本名徹次指揮東京フィルハーモニー交響楽団。

1曲目はルカス・ファヒンの「Crónica Fisiológica Universal」。題名は、宇宙の生理的歴史、という意味だそうだ。全編にわたって特殊奏法が使われているのだが、音響は非常に視覚的で、宇宙が生まれて進化する映像が目に浮かぶ。作曲技術がきわめて高度だと感じた。しかし、やや唐突な終わり方をしたせいか、演奏が終わった後の私の中には何も残らなかった。

2曲目はラファエレ・グリマルディの「Creatura temporale」。これも特殊奏法を使いまくっているが、響きはとても面白い。やはり作曲技術は非常に高いと思う。こちらの終わり方は自然だったが、1曲目と同様、技術が先に立ちすぎて内容に乏しかったように思う。

3曲目は木村真人の「果てしなき反復の渦−混沌の海へ」。ラッヘンマンも譜面審査のコメントで述べているように、この曲は、他の4曲とは異なり、「ラッヘンマン的」でない。つまり、特殊奏法をほとんど使わず、「常套的な器楽作法も躊躇なく多用」している。それでも、音響は決して常套的にはなっておらず、ラッヘンマンがファイナリストに選んだのも納得できる。標題音楽的に海を描写するのではなく、海の持つ力を再現している。海というよりも、生命の力強さを感じた。やや直裁的すぎるという気もするが、思う存分書きました、という感じで、私は好感を持った。

4曲目は山本和智の「ZAI for Orchestra」。題名はアイヌ語で「群れ」と同時に群れを構成する要素も意味するそうだ。オーケストラは8群に分割されており、その中にはジャズバンド風の構成のものがある。曲の終わり近くで、各アンサンブルがそれぞれの音形を奏しはじめ、混沌とするのだが、ジャズバンドはもちろんジャズを奏でていた。さらに、コーダの部分では演奏家が拍手をする。この2点については、奇を衒いすぎているように感じた。

5曲目は、酒井健治の「ヘキサゴナル・パルサー」。前の曲と比べオーケストラの規模はぐっと小さくなったが、音は力強さを保っていた。ということは、個々の楽器の使い方がうまいのだろう。オーケストラは4群に分けられており、そのことによって曲の形式が分かりやすくなっていたように思う。オーケストラが客席を取り囲むように配置できたら、もっと面白いのではないか。それでも十分な説得力があり、完成度が非常に高いと思った。

私が勝手につけた順位は、1位酒井さん、2位木村さん、3位グリマルディさん。所用があって、ラッヘンマンの審査結果は聞かずに帰ってしまった。

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羽鳥 公士郎