blog.鶯梭庵

二〇〇四年 長月 廿六日 日曜日

千羽鶴問題・とりあえずの結論 [/origami]

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折り鶴は鶴に似ていない。それでも折り鶴は鶴を指し示している。折り鶴と鶴は、社会的に結びついているからだ。

したがって、折り鶴の形を決めているのは、鶴の外形ではなく、社会的規範なのである。社会的に認められている折り鶴と鶴との結びつきが破壊されない範囲で、折り鶴の形は様々に変化しうるし、実際に変化している。首を大きく折るか小さく折るかということはもちろん、首と尾を細く折るときに、角の二等分線で折らずに垂直に折る、いわゆる韓国式折り鶴というのもある。

千羽鶴を作るという文脈では、折り鶴は、健康・平和・成功といった概念のシンボルとして機能するから、鶴と外見的に結びつくという要請はますます緩くなる。その場合、折り鶴の形については、さらに大きな振れ幅が許容されるようになる。はばたく鳥は、おそらく折り鶴から派生したもので、羽をはばたかせるという機能を強調するときは折り鶴とは別の作品だと考えられるが、はばたく鳥で千羽鶴を作っても千羽鶴と認められるだろう。また、本来は折り鶴とは関係のないふくら雀が、雌の鶴に見立てられることがあって、これで千羽鶴を作ることもある。

そうなれば、首を折らない折り鶴で千羽鶴を作るということも、当然許容範囲に含まれてくる。ところが、こういったことは、言語の変化と同じで、変化を容易に受け入れる人と、そうでない人がいる。ら抜き言葉を普通に使う人と、ら抜き言葉は正しい日本語ではないと考える人がいる。それと同じように、首を折らない千羽鶴を普通に作る人と、首を折らない折り鶴は正しい折り鶴ではないと考える人がいるのだ。

人間というのは、自分の立場を正当化したがるという習性を持っているらしい。首を折らない折り鶴を折る人たちは、首を折らないことを正当化しようとして、例えば首を折るのは不吉だという話をでっち上げる。逆に、首を折るべきだと考える人たちならば、折り鶴は鶴に似ていなければならないという話をでっち上げるかもしれない。いずれにせよ、そこには、変化を受け入れるか受け入れないかという立場の違いがあるだけなのだ。


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羽鳥 公士郎