二〇一〇年 水無月 十八日 金曜日■ 参議院の選挙制度は悪い見本 [/links]加藤秀治郎著『日本の選挙 まず、選挙区について言えば、定数が複数の選挙区であっても、有権者は1人1票しか投票しない。日本の選挙は昔からこうなので、私もこの本を読むまで知らなかったのだが、こんな選挙制度は日本にしかないそうだ。選挙制度というのは基本的に小選挙区か比例代表かのどちらかであって、いわゆる中選挙区というのは世界に例がない。 世界に例がないのには理由があって、定数が複数で1票しか投票できないとすると、政党本位の投票行動ができなくなる。政党は、議会で過半数を占めようと思えば、同じ選挙区に候補者を複数たてなければならない。いわゆる同士討ちが必然的に発生するが、日本は議院内閣制を採用しているので、同じ政党の候補者同士が政策でお互いに差別化することはできず、利益誘導政治となりやすい。また、政党の応援だけでは当選がおぼつかないので、各候補者が後援会を持ち、選挙のときには後援会が力を発揮する。後援会が属人的で、多くの場合世襲されるため、日本に世襲議員が腐るほど多い。 日本の衆議院はかつて中選挙区を採用していた。自民党以外の党に政権をとる気がまったくなかったから、それでもよかった。中選挙区であれば、各選挙区に候補者を1人ずつ出していれば、政権は絶対にとれないが、ある程度の勢力を確保できる。社会党は、その勢力を使って国会の審議を適当に遅らせ、国会対策という名目で自民党から袖の下をもらっていた。自民党は自民党で、派閥に分かれているから、同じ選挙区で複数の候補者が出るほうが都合がよかった。 しかし、衆議院で政権交代が実現した今となっては、この選挙制度はうまく機能しない。定数が複数であれば、票も複数にすればよい。3人区なら3票投票できるようにする。そして政党は3人の候補者をたてる。そうすれば、3つの小選挙区が合わさったのと実質的に同じであり、政党本位の選挙ができる。 次に、比例代表は、日本全国が1つの選挙区であり、非拘束名簿方式だ。つまり、有権者は個人名を書く(政党名を書いてもよい)。この制度の問題は、情報コストが高いことだ。定数が 48 人なので、100 人程度の候補者が立候補するとして、その 100 人の公約をすべて理解して、最もよいと思われる1人を選ぶなどというのは、実質的に不可能だ。いきおい、タレント候補が票を集めることになる。そうである以上、政党としては、タレント候補をたてないわけにはゆかない。 非拘束名簿方式をとるなら、選挙区を小さくして定数を少なくすれば、情報コストが下がる。ところが、日本ではなぜか、拘束名簿方式の衆議院のほうが小さい選挙区に分かれている。拘束名簿方式で選挙区を小さくするのは、メリットが何もない一方、小政党に投じられた票が死票になりやすい。それでは比例代表制にする意味がない。 このように選挙制度がでたらめなのは、選挙制度が党利党略や私利私欲で決まっているからだ。そんな中、衆議院は、政権交代を可能にするために制度を改め、実際に政権交代が起きたので、選挙制度改革がある程度の成果をあげたと言える。現状、参議院の役割は衆議院とたいして変わらないのだから、参議院も同じ制度にすればよさそうだが、そうすると参議院は衆議院の単なるコピーとなって、存在意義が問われる。しかし、現状の最悪の選挙制度をいつまでも続けるわけにはゆかない。まずは参議院の役割そのものを見直す必要があり、それに応じて選挙制度が決定されるべきだ。 |