二〇〇八年 文月 十四日 月曜日■ 0.999... = 1 という式について [/links]0.999... = 1 という式については、以前にも取り上げたことがある。右辺の 1 が自然数だとしたらこの式は成り立たないが、実数だとしたら成り立つと述べた。 ではなぜ実数ならこの式が成り立つのかといえば、「1」という記号と「0.999...」という記号が同じ数を指すからである。この等式は、実質的に、「一 = 壱」という等式に等しい。漢字の意味を知っている人にとって、この式が正しいことは自明だ。0.999... = 1 についても同様に、これらの記号の意味、特に「...」という記号の意味を知っている人にとって、この式が正しいことは自明だ。 それゆえ、この式が正しいことを証明することは極めて容易だが、しかし、その証明に納得するかどうかは別問題だ。「...」という記号の意味を知らなければ、その証明をいくら読んでも、理解できない。漢字という概念を知らない人に「一 = 壱」という式を説明することを考えてみるとよい。逆に、「...」という記号の意味を理解しさえすれば、この式は証明などしなくとも理解できる。 「...」と書くと、普通の人は何か分かった気になるが、数学におけるこの記号は、実は漢字を知らない人にとっての「壱」と同じぐらい理解の難しい記号なのである。これを本当に理解するには、数学における「無限」や「極限」という概念を理解しなければならないし、それにはδ-ε論法やそれと同等の話が必要だ。 「一 = 壱」という等式が日本語の文脈でしか成り立たないのと同様、0.999... = 1 という式は数学という文脈でしか成り立たない。さらに言えば、数学にとって「無限」や「極限」という概念は基本的なものなので、数学は 0.999... = 1 という式が成り立つように作られていると言ってもいいくらいだ。 そういうわけなので、本当は、この式が正しいことを証明することはできないのだ。(もちろん、誤っていることを証明することもできない。)せいぜい、この式が成り立つようにこれらの記号に意味を与えることが理にかなっていることを説明できるにすぎない。 もちろん、その説明に納得したからといって、そのような数学が唯一可能な数学体系だということにはならない。日本語が唯一の言語でないのと同様、実数を使う数学というのも唯一の数学ではない。0.999... = 1 という式が成り立たない数学体系を作ることもできる。その場合、各記号の意味が変わるが、同じ漢字が日本語と中国語で意味が変わることだってあるのだ。 |
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