blog.鶯梭庵

二〇〇八年 卯月 廿七日 日曜日

「青少年ネット規制法案」の非現実性 [/links]

自民党と民社党がそれぞれ、いわゆる「青少年ネット規制法案」を準備しているそうだ。私は法案を読んだわけではないが、津田大介氏の記事小寺信良氏のコラムを読むと、自民党案はまるで非現実的な法案のようだ。こんなものを作ったところを見ると、自民党の議員はコンピュータやインターネットのことをまるで知らないのだろう。

まず、有害なコンテンツを判断する基準は内閣府の独立行政委員会が決めるのだという。これが具体的にどのような基準になるかは分からないが、そのままフィルタリングソフトに実装できるような基準を作ることは、現実として不可能だ。ウェブ上のコンテンツというのは、サイト単位やページ単位ではなく、ブログのエントリや掲示板の書き込みの単位で増えるのだから、日本だけでも1秒に数コンテンツでは収まらないだろう。それにリアルタイムでついていく基準を作るのは、ある程度抽象的なものにするとしても難しい。

仮に抽象的な基準ができたとしても、それではフィルタリングソフトは動かない。コンピュータは抽象的な指示は理解できない。では、現状のフィルタリングソフトの能力はどうかというと、Google ですら検索結果から有害なサイトを排除するのに四苦八苦している状態で、有害コンテンツと有益なコンテンツを区別できるフィルタリングソフトは存在しない。フィルタリングソフトを義務化すれば、有益なコンテンツの多くにアクセスできなくなる。

また、ISP や PC メーカーにフィルタリングを義務付けているのだが、携帯電話ならいざ知らず、複数の人が共有することの多いコンピュータや回線では、自分が販売するコンピュータや自分が提供する回線を使っている人が 18 歳以上であるかどうかを感知するすべはない。まさか年齢にかかわらずすべての人にフィルタリングを適用するわけにはゆかないだろうから、フィルタリングの機能だけを用意しておいて、必要な場合は有効にしてください、とするほかはないだろう。

Mac OS X にはペアレンタルコントロールという機能があるが、こういう形態ならば現実的に対応できる。しかしその場合、子供が自分から進んで設定するとは考えにくいから、親が設定することになる。設定ができるだけのコンピュータリテラシーと時間を持っている親が、この日本にどれだけいるだろうか。

さらに、サイト上の有害コンテンツを子供に見せないようにする義務をサイト管理者に課しているところを見ると、この法案を作った人は誰一人として CGM とか UGC といった言葉を知らないのだろう。Web 2.0 の世界では、サイト上のコンテンツは、サイト管理者がアップロードしたものばかりではなく、ユーザーがアップロードすることも多い。そして、現実問題として、ユーザーの中には悪意を持った人が少なからずいるのだ。

このブログでは、スパムコメントは1日10件程度で、そのほとんどは単純なフィルタリングではじいているから、悪意を持ったコンテンツを制御できているが、大規模な CGM サイトになれば、コンテンツ管理が追いつかないのは必至だ。著作権法であれば、違法コンテンツをアップロードした人の責任を問えるが、この法案では、有害コンテンツをアップロードした人はお咎めなしだ。これはまったく馬鹿げている。

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羽鳥 公士郎