二〇〇七年 睦月 廿八日 日曜日■ 自然数と実数 [/links]以前、ドゥルーズが自然数と実数のあいだに断絶があると主張していることを紹介した。そのことについて、少し検討してみたい。 加減乗除という言い方がある。乗法は加法の繰り返しと考えることができる。つまり、2 x 3 というのは、0 に 2 を加えるのを 3 回繰り返すと何になるかと問うている。そこで、除法を減法の繰り返しと考えてみる。6 / 2 というのは、6 から 2 を引くのを何回繰り返すと 0 になるかと問うている。 一方、減法は加法の逆演算だと考えることができる。6 - 2 というのは、2 に何を足したら 6 になるかと問うている。そこで、除法を乗法の逆演算だと考えることもできる。6 / 2 というのは、2 に何を掛けたら 6 になるかと問うている。 さて、5 / 2 はいくつだろうか。前者の考えでは、商は 2 で余りが 1 だ。一方、後者の考えでは、商は 2.5 となる。前者が自然数の演算であり、後者が実数の演算である。この2つの演算は、たまたま式の表記が同じであるが、問うている内容が異なっており、したがって答えも異なる。 自然数というのは、なにかの数である。机の上にリンゴが1個ある。または、机の上にリンゴが2個ある。または、机の上にリンゴがない。これは、机の上にリンゴが0個あると言ってもよいだろう。自然数は、数を表す指標として用いられる。数は数えられる。 一方、負の数や少数や分数や実数といったものは、数えられない。机の上にリンゴが -1個あるという文や、机の上にリンゴがπ個あるという文は、無意味だ。最低気温が摂氏 -1度であり、円周の長さがπcmである。これら実数は、量を表す指標として用いられる。 ところが、最低気温が摂氏 -1度と言ったとき、-1 というのは近似値に過ぎない。量を数字で正確に書き表すことはできない。小数点以下どこまで細かく書いても、ドゥルーズ風に言えば、差異がある。つまり、数字は自然数を記述するためのもので、実数を記述するためのものではない。 ドゥルーズは、1 = 0.999... という等式は成り立たないと考えた。その考えは、半分は正しいが、半分は間違っている。右辺の 0.999... は、実数である。左辺の 1 が、もし自然数だとしたら、自然数と実数とを等号で結んだところで、当然等式は成り立たない。自然数と実数との差異は、5 / 2 という式の答えが異なってしまうような、あるいは 2 - 6 という式の答えが異なってしまうような(自然数では「解なし」であり、実数では -4)、乗り越えることのできない断絶だ。 一方、左辺の 1 もまた実数だとしたら、この等式は成り立つのである。なぜなら、1 も 0.999... も同様に近似であって、両者は同じ実数を表しているからだ。あるときは 1 と書かれ、あるときは 0.999... と書かれる実数 a がある。数字は実数を近似的に表記することしかできないから、1つの実数を2通りのしかたで表記することもあるのだ。この場合、1 と 0.999... とのあいだの差異は、単なる表記の差異に過ぎない。しかし、ここに別の種類の差異が現れていることに気が付かねばならない。すなわち、1 と a とのあいだの差異であり、それと同じことだが、0.999... と a とのあいだの差異だ。 ドゥルーズが差異を見たのは正しい。しかし、ドゥルーズは、差異と差異とのあいだの差異を見逃していると思う。 |
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