二〇〇九年 皐月 廿六日 火曜日■ 最小公分母 [/language]この記事は書かれてから1年以上経過しています。内容が古くなっている可能性があります。コメントの受付は終了しました。 英語に least common denominator という言い方がある。lowest common denominator とも言う。辞書を引くと、「最小公分母」という訳が載っている。数学の用語で、分母が異なる分数を通分するときの最小の分母を意味する。たとえば、1/3 と 1/4 との最小公分母は 12 である。 しかし、日本語で「最小公分母」という言い方はしない。少なくとも、学校では習わない。最小公倍数(least common multiple)という言葉があって、それだけで十分間に合うからだ。数学の分野でこの言葉が出てきたら、たいていの場合は「分母の最小公倍数」とでも訳せばよい。 しかし、この言葉は、数学以外の分野でしばしば比喩的に使われる。多くのことがらから共通するものを取り出そうとしたり、多くの条件を満たすような妥協案を求めたりすると、結局わずかしか得られない、というような、否定的なニュアンスを持つ。 これを日本語に訳そうとすると、困ってしまう。「最小公分母」という、ほとんどの日本人が聞いたことのない言葉に置き換えて、すませるわけにはゆかない。だからといって、「最小公倍数」と訳してしまうと、3 と 4 とで 12 になるということだから、もとより増えてよかったよかった、という話になって、原文のニュアンスとは正反対になってしまう。1/3 と 1/4 とで 1/12 になってしまうという感じを表現したいので、むしろ「最大公約数」の方が感覚としては近いのだが、それでも「最大」という部分で否定的なニュアンスが弱められてしまう気がする。 文脈によって、それほど否定的でない場合は「最大公約数」がしっくりくるだろうし、さらに中立的に「共通部分」としてもよい場合もあるだろうが、もっと否定的なニュアンスを出したい場合もある。「いわば公約数」とでもすれば感じが伝わるだろうか。 |
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